「脚本家・櫻井武晴の総決算」名探偵コナン 隻眼の残像(フラッシュバック) しゅうへいさんの映画レビュー(感想・評価)
脚本家・櫻井武晴の総決算
"名探偵コナン(映画)" シリーズ第28作。
通常スクリーンで鑑賞。
原作マンガは未読。
テレビシリーズで折につけ触れられていた、大和警部が隻眼になった所以である雪崩事故の秘密がついに明かされる。
本作を観るために関連回を視聴した俄である私も気になっていた事柄であり、ファンにとって待望久しい内容だろう。
謎解きの楽しみ有り、コナン映画では珍しい本格的なガン・アクション有りと盛り沢山で、手に汗握って見入った。
近年で一、二を争う面白さだった。櫻井武晴脚本回と私の好みが完全に合致していて、相性が良いからかもしれない。
公安警察や「隠れ公安」の暗躍、刑事総務課の登場などは子供向けアニメとは思えぬ歴とした骨太刑事ドラマである。
ファンの年齢層が上がっているから成立するストーリーかもしれない。櫻井脚本の持ち味が十二分に発揮されていた。
独自のカラーを出しながら「名探偵コナン」のキャラクターの持ち味を活かして躍動させる手腕は、さらに磨きが掛かっていた。コナンくんが小五郎の想いを汲んで謎解きを自ら語らせたり、大和警部の「来い!」や小五郎のラスト・シューティングなど、胸がアツくなる名シーンを生み出してくれた。
犯人像に意外性は乏しかったが、伏線をきれいにまとめ上げ整然とした解を提示する腕前は、さすが刑事ドラマ畑で鍛えられたからこその安定感があり、論理が美しかった。
ドラマ「相棒」での脚本担当回など、彼がこれまで手掛けた作品のエッセンスが凝縮されていることに気づかされた。
例えば、舟久保が長野県警本部に娘が被害者となった事件の犯人の行方を訊ねに来る場面は、シチュエーションは異なるが「相棒」シーズン3の「ありふれた殺人」を想起させる。
国が進める法案成立に関連して当局側の人間が事件を起こすところも、「相棒」などで見たことのある筋書きだ。社会派なストーリーが得意なのも櫻井脚本の特徴であり、まさに本作は「脚本家・櫻井武晴」の総決算と言える作品だと思う。
[余談]
本格推理と物理法則ガン無視の超人オリンピック的アクションを両立させている世界観は唯一無二だろうし、それを受け入れるファン層の懐の深さを改めて実感させられた次第だ。
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