「原作への敬意を払った原点回帰で劇画タッチ、さらに徹底した大人向けでハードボイルド志向が特徴的で見どころ。」LUPIN THE IIIRD THE MOVIE 不死身の血族 矢萩久登さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0原作への敬意を払った原点回帰で劇画タッチ、さらに徹底した大人向けでハードボイルド志向が特徴的で見どころ。

2025年6月28日
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鑑賞方法:映画館

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『ルパン三世』劇場版2D作品としては1996年以来29年ぶりの最新作『LUPIN THE IIIRD THE MOVIE 不死身の血族』が公開。早速、TOHOシネマズ日比谷さんへ。

ご存じの通り原作の連載開始は1967年8月、TVシリーズ(第1シリーズ)は1971年10月から放送開始され、誕生からすでに半世紀以上愛される国民的人気長寿作品。

シリーズが長期化するなるなかで本作も『007』『ゴジラ』『仮面ライダー』『ウルトラマン』同様、時代の変化や空気、ニーズを汲み取りながら、作風を一変させてきました。

イタリアのマルコ・ヴィカリオ監督の傑作ケーパー映画『黄金の七人』(1965)の軽妙洒脱な雰囲気をモチーフとした第1シリーズ(緑ジャケット版)は完全に大人向けで重厚なハードボイルド作品でしたが、6年後の1977年10月スタートの第2シリーズ(赤ジャケット版)はスピーディーでテンポの良いスラップスティックなコメディータッチに刷新。但し、第1シリーズも根強い人気で頻繁に再放送されて、毛色の違うルパンを同時期に視聴していましたね。

そしてルパンのイメージを決定づけたのはなんといっても宮崎駿氏の映画初監督作品『カリオストロの城』(1979)。同作でアウトローではなく心優しい男と描かれ、同作の評価が上がるにつれてルパンのキャライメージも定着していきました。

本作『LUPIN THE IIIRD THE MOVIE 不死身の血族』ではTVシリーズ『LUPIN the Third -峰不二子という女-』(2012)から連なる原作への敬意を払った原点回帰で劇画タッチ、さらに徹底した大人向けでハードボイルド志向が特徴的で見どころ。
作風的には諜報部員になりたてのジェームズ・ボンドを描いたダニエル・クレイグ版『007/カジノ・ロワイヤル』(2006)からの一連のシリーズのような明るく陽気な3代目ロジャー・ムーア版とは違うシリアス路線と合致しますね。

まだルパンはじめメンバーが余裕綽々でなく常に切迫した緊張感が続くのもこれはこれで斬新、初期のハードなアダルト路線を継承した『ルパンVS複製人間』(1978)の壮大な前日譚というストーリーラインも往年のファンには嬉しいサプライズでしたね。
※公開日の金曜ロードショーも『カリオストロ』ではなく『複製人間』の放送の方が良かったかもしれませんね。

本作だけの単独鑑賞でも本編最初に振り返り映像があるのでそれほど困りませんが、100%楽しむためには『次元大介の墓標』(2014)、『血煙の石川五ェ門』(2017)、『峰不二子の嘘』(2019)、少なくとも直前公開された『銭形と2人のルパン』(2025)を鑑賞しておくと小池健監督版『LUPIN THE IIIRD』をより一層楽しめるはずです。

矢萩久登
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