劇場公開日 2025年4月11日

「秘技「ダブルボールクラッシュ」炸裂。70年代懐古のおばかスプラッタ・ウエスタン!」皆殺しに手を貸せ じゃいさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5秘技「ダブルボールクラッシュ」炸裂。70年代懐古のおばかスプラッタ・ウエスタン!

2025年1月18日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

俺、映画に限らず私生活も含めて、これだけはっきりと、他人のた●ぶ●ろを長時間、目に焼き付けたのは、生まれて初めてのような気がする(笑)。
こんなカス映画で俺の初めてが犯されるなんて!!

でも、いままでの映画でこんなシーンついぞなかったよね?
あれをあえて狙う殺し屋といえば、東映時代劇『影同心』の金子信雄(ハマグリのカラで悪人の睾丸を握りつぶしてショック死させる)と、平松伸二のコミック『ブラック・エンジェルズ』の羽死夢と相場が決まっているが(決まっているのか??)、まさか実写映画で、それも「生もの」でくだんのシーンが観られるとは思いもしなかった。
その意味では、本作は間違いなく「最狂に痛そうな拷問シーン」の歴史に新たな1ページを書き加えたことになる。

てか、マジでシュールな絵柄だよなあ。
への字開脚させられた肥ったオッサンの股間に、かなとこ石みたいなのが置いてあって、そこに高級和菓子のように露出させられた「なに」がちんまり載せられている。その前にうんこ座りした女が拳銃を振りかざして待ち構えていて……。
こわい! こわいよ!! 痛い痛い痛い、痛すぎるwww
しかも、一気にいかないんだよ。
何回か、「甘叩き」しててさ……マジ、ひどすぎる。

― ― ― ―

毎年1月恒例、ヒューマントラストシネマ渋谷の「未体験ゾーンの映画たち2025」(劇場で買い付けてもらえずお蔵入りになった映画の虫干し企画)にて視聴。ふつうに面白かったし、こういう映画は大好きだけど、星を4つも5つもつけるような映画では断じてない。

とにかく60~70年代のグラインドハウス映画の好きなオタク監督が、60年代のカメラと16ミリフィルムで、往年のおバカホラー&マカロニ・ウエスタンへのオマージュたっぷりに撮りあげた、低予算娯楽作。
ふつうに面白いし、ふつうに観ていて楽しい。
こざかしい理屈とか、オタク的なにおわせネタとかもあまりなく、ただただ好きな60~70年代のおバカな低予算映画を「再現」することだけに徹しているのが、ある意味、潔い。
でもまあ、「再現してどうする??」ってのはあるよね(笑)。
懐古だけで、なんにも進歩してないんだから。

ジャンルとしては、いわゆる「ウィアード・ウエスタン」ってものに属する映画かと。
要するに、ホラー(オカルト)と、ウエスタンのまじったようなやつ。
そもそも上の二つのジャンルの小説群は、60年代には似たような読み捨て雑誌に載っていたわけで、親和性は非常に高かった。なので、お化けや超常的要素の出てくるウエスタンって、意外とたくさん書かれている。
映画でも、吸血鬼がガンマンだったり、ガンマンが吸血鬼と戦ったりする映画が50年代末から60年代にかけてアメリカで結構撮られていて、マカロニにもいくつかその系統のウィアード・ウエスタンが存在する。
考えてみれば、クリント・イーストウッドの『荒野のストレンジャー』と『ペイルライダー』だって、「主人公が実は●●だった」というオカルト的解釈の可能な映画だった。

『皆殺しに手を貸せ』の場合、チープだが単純明快な復讐ウエスタンに、ハーシェル・ゴードン・ルイスやイタリアのジャッロのような、ゴアでトリッキーな殺戮シーンが継ぎ足されている。すなわち、ルチオ・フルチが『真昼の用心棒』の路線を諦めずに、『地獄の門』みたいな要素を足した形でウエスタンを作り続けていたら、もしかすると作ったかもしれないような作品を目指しているといってよい。

― ― ― ―

ヒロインのモリー・ペイと夫は、追剥ぎ稼業から足を洗って、小さな養豚場で生計を立てながらつつましく暮らしていた。
だが、いきなり旦那が賞金稼ぎにヘッドショットを食らって殺されてしまう。
弁護士殺しの犯人だからという理由に到底納得のいかないモリーは、街に出向いて保安官に再捜査を依頼するが、一向にらちが明かない。そのうちモリーのもとに次々と刺客まで送られてくる始末。なんとか返り討ちにしたモリーだったが、彼女は、実は弁護士を殺したのが当の賞金稼ぎで、彼と街の保安官と葬儀屋がグルになって金塊を強奪していた事実を知る。
濡れ衣で夫を殺され、自らも標的とされたモリー・ペイは復讐の鬼と化して、街を牛耳る悪を一掃するべく、立ち上がるのだが……。

●主人公のガンマンが女性という意味では、スーザン・ジョージの『J&S/さすらいの逃亡者』(早稲田松竹のリヴァイヴァルで観た記憶がある)や、シャロン・ストーンの『クイック&デッド』(腹の穴から向こうが見えるギミックの個人的初体験)が思い出される。ラクエル・ウェルチの『女ガンマン 皆殺しのメロディ』(バート・ケネディが監督してるからアメリカ映画だと思い込んでいたが、英国製らしい)あたりは、結構直接的な影響を与えているかもしれない。

●冒頭から、ベートーヴェン「エグモンド」序曲のマヌケなBGM使用と頭の悪そうな曲継ぎに大爆笑。なんかいろいろひどすぎるけど、映画の「ノリ」を客にわからせる良いアヴァンタイトルだともいえる。

●この大西部の街の、デブ率の高さは異常(笑)。
最初は「悪い奴は私腹をこやして、こえ肥る」ってネタかと思ってたんだけど、ヒロインの味方で登場する黒人の新任副保安官までこえ肥ってる。

●その他、マカロニ・ウエスタンもどきとしても、スプラッタ・ホラーとしても、素人の自主制作の域を出ない映画ではあっても、この手のジャンル映画への過剰な偏愛と盲目的信仰はしっかり伝わってくるので、楽しく観られることに変わりはない。
総じて、ゴア&臓器多め、オカルト要素あり、終盤は派手な銃撃戦あり、由緒正しいスタイルの決闘もあり(解決は変化球だが)。

●死神関連は、ちょっとダリオ・アルジェントの『インフェルノ』を思い出したが、もっと適切な元ネタがあるかもしれない。あと、荒野の一軒家に住んでる女性が、荒くれ男たちの暴力&性暴力にさらされるのは、去年観た『デスゲーム ジェシカの逆襲』と似たテイストだが、これももっと直接的な元ネタがあるのだろうと思う。

●終盤で本格的なプロレス技がさく裂しまくるのは、サント映画(覆面プロレスラーのエル・サント本人が登場して悪をなぎ倒してゆくメキシコ製ヒーロー映画の総称)のパロディか? 昔、ジョン・カーペンターの『ゼイリブ』でもおんなじようなことやってたけどw

●豚に肉の処理をさせる映画で個人的に観たことがあるのは、『殺人豚』と『地獄のモーテル』だが、ほかにもいろいろありそうな気がする。

●黒覆面で覆いつくされた「死神ガンマン」の装いは、マリオ・バーヴァの『モデル連続殺人!』の白覆面殺人鬼が元ネタか? これもいろいろ似たようなのがジャッロとか怪人映画であったような。フォークに刺さった眼球の元ネタは、ハーシェル・ゴードン・ルイスの『ゴア・ゴア・ガールズ』か、はたまたジョエル・M・リードの『悪魔のしたたり』に出てくる「目玉焼き」か? ……ってまあ、ほんとは心底どうでもいいんだけど(笑)。

●考えてみると、邦題って誰に向かって言ってるタイトルなんだろう?
間違いなくヒロインじゃないよね。
そうすると、黒人のデブの副保安官に対して言ってるとしか思えないんだが、なんかタイトルとしてはちょっと変だよね。
あるいは、死神に対して「あたしに協力しろ」って言ってるってことなのかな?

●あんなむき身の状態で、棺桶に金塊が山盛り放り込んであるのはおかしいとか、話の適当な部分を挙げ出したらキリがないけど、この手の映画にしてはむしろ「結構、脚本も設定もきちんとしてる」ほうなのではないかとも思う。

この手の映画が好きな人が観て、がっかりするような映画では全然ないので、ぜひ機会があったら観て、「●んたまひゅーん」を体験してみてください(笑)。

じゃい