セプテンバー5のレビュー・感想・評価
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制作者側にマドンナの元ダンナ!
1972年ミュンヘン五輪といえば、バレー好きの私からしたら、全日本男子バレーが唯一の金メダルを取ったオリンピックとして語り継がれている程度の知識しかなく、裏でこんな悲惨な事件があったとは…。
今は亡き松平康隆監督の元、クイック、時間差攻撃、ジャンプサーブ、天井サーブ…今の速攻コンビバレーの原型を産んだ伝説の12人の印象しかないほど、日本は男子バレー初の金メダルに浮き足だってた印象しかありませんでした(いえ、直接当時の試合を見てたわけではなく、よく秘蔵映像として以前のバレー経験者なら繰り返し見ていました)。
その時起きた人質テロ――五輪史上最悪の事件として、今もなお語り継がれている歴史的な1日を基に描かれている作品が本日昼の回でバンクーバー公開が最後ということで、雪がチラつく中観に行きました。
日本人選手のメダルラッシュに沸いた夏が記憶に新しいオリンピック。その長い歴史の中で今なお大会史上最悪の事件として語られるのが、1972年9月5日、ミュンヘンオリンピック開催中に起きた、パレスチナ武装組織「黒い九月」によるイスラエル選手団の人質事件。本作は、突然世界が注目する事件を中継する事になったTVクルーたちの視点で、事件の発生から終結までの1日を90分間ノンストップで描いています。
第82回ゴールデングローブ賞では作品賞(ドラマ部門)、第97回アカデミー賞では脚本賞にそれぞれノミネートされていますので、ご興味のある方はぜひ。
主人公を演じたジョン・マガロが「(1972年)9月5日(セプテンバー5)にニュースの歴史が変わった」と語る本作は、1972年のミュンヘンオリンピック開催中、パレスチナ武装組織「黒い九月」に襲撃されたイスラエル選手団11人が犠牲になったテロ事件を題材に、緻密な脚本と重厚な映像で圧倒的な緊迫感を描き出した社会派映画となっていて、このイスラエル選手団人質事件は、選手団11人の他に、警察官1人と犯人5人の合計17人が死亡しました。
「脚本を読んですぐにやると決めた」と脚本に惚れ込んだショーン・ペン。「全員のエネルギーが生み出した至極の作品だ」と本作の完成度に自信を見せているとのことでした。ピーター・サースガードもまた「見事な脚本で、物語の伝え方を熟考してある」と、ティム・フェールバウム監督自身が執筆した緻密な脚本を絶賛しています。
フェールバウム監督とともに脚本を書き上げたモリツ・バインダーは「1972年の事件を新しい視点で届ける。現代に生きる人にこそ見てほしい」と熱く語り、本作ではプロデューサーに徹したペンも「最高の美術チームが作り上げたセットが、俳優の魅力を引き上げると証明した」とセットデザインにも凝っていることを語りました。
1972年当時の中継スタジオを徹底的に再現するため、製作チームは個人収集家や博物館、放送局の倉庫に至るまで調査。フェールバウム監督やキャストたちも、セットの隅々に置かれた実際に動く1972年当時の機材に「(本作が描く1972年当時の)世界に入り込める」と口を揃える。CG合成のブルーバックの前で演技するのではなく、セットにある実物に触れて体感でき、半世紀もの時間を自然にタイムスリップできる撮影現場に感動しきり。
本作の大部分は、事件が起きたミュンヘンで撮影されていて、今回撮影された映像と1972年当時の映像を組み合わせて、色合いなんかもかなりリアリティを感じましたし、編集のハンスヨルク・バイスブリッヒは「観客が物語に没頭できるようにテンポの速い作品にしたかった」と、本編を96分に凝縮し圧倒的なスピード感で観客をエンディングまで誘う編集の意図を語っています。
ドキュメンタリー作品ながら、特にリアルなドンパチシーンもなく、全体的には静かな作品ですが(後ろの席からイビキが聞こえましたw)、オリンピックがビジネスだけでなく政治的にも利用される所以はこの事件だったのかと思わされましたし、国際関係、警察の対応、テロ対策、マスコミの報道のあり方など、多面的に考えさせられました。
多少退屈に思われるかもしれませんが、エンディングロールの後、制作、俳優陣へのインタビュー動画がありますので、ぜひ最後まで席を立たずにご覧下さい。
忘れてはならない
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