セプテンバー5のレビュー・感想・評価
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この時期に突きつけられる
メディアリテラシーについて
緊張感が凄かった
だれの事件
だれの責任?報道の功罪。緊迫の映像と、1時間半の短い尺を無駄にすることなく濃密な時間で駆け抜ける編集で、報道の義務と責任を描く実話モノの報道スリラー。"実話"モノとは言っても、例えば『大統領の陰謀』や『ペンタゴン・ペーパーズ』のように報道のあるべき姿(可能性)と格好良く英雄(ヒロイズム)的な面を映し出したタイプの作品ではない。無論、事件の顛末的にそうなるわけないのだが…。
本作はむしろ最前線の事件の周りであれこれ動き回って余計なことをして"遊んだ"結果、事件の展開を悪くさせることこそすれど、良い方向への影響は決して及ぼしていない報道の功罪についてだ。そんな、テレビ史上に残る悲劇・惨劇を驚くべき再現度とリアリティで再訪・追体験する1日。よく書かれた脚本と恐ろしく手際のいいストーリーテリングで、舞台劇・密室モノ的に報道室で繰り広げられる手に汗握る展開に釘付け!
「事件は現場(選手村)で起きてるんじゃない、ニュースルームで起きてるんだ!」的な驕り・思い上がり(?)から、それがどういう結果を招くかという職業倫理的な部分や後先のことは考えず(無視して)、自分の仕事をしているだけと飛びついたがための結果。ジョン・マガロがそんなニュースルームを瞬時の判断を迫られる切迫した状況の中で統率し、『ニュースの天才』がどうしても頭をよぎるピーター・サースガードが喝と指示を飛ばす。
25-023
オリンピックのはずが
事件については全く知らない、親から聞いたこともない
特殊部隊か報道スペシャリストが5人?と思ったら日付
TV局生中継の慌ただしさ、事件の成り行き終始ヒリヒリしたムードで見るというか、見守っていた 現場の皆さん臨機応変でその場その場で判断下すの難しかっただろうな
報道に関する問題だけじゃなく?過去の事件、メガネの渋いおじさん達が奮闘するお堅い雰囲気でしたが、ユダヤとドイツとかイスラエルとパレスチナとか今尚起こっている問題にも触れてるようにも感じました
しかしあんな凄い灼光でその情報、えーっと思っていたら...
構成の妙
物語の最初から最後までオリンピックの生放送の中継基地の視点のみで話が進むのに中弛みせず飽きさせない構成は見事
恐らく当時の実際の報道の素材も使ったであろう映像も良かった
当時の番組製作の裏側っぽいモノも垣間見えてそこも良かった
テレビマン全員がプロ意識もった職人集団みたいでかっこよかった
でも名前と顔が一致しないまま声だけの出演になるキャラがいたり
視点は中継基地で固定なのにキャラは事件現場各地に行ったり来たりするから
全体像が若干わかりにくい部分もあった
それから1972年当時の世界とドイツを取り巻く環境をあらかじめ理解してないとピンと来ないやり取りが多少あって
人によっては物語に入り込む妨げになるような気もした
さらに今では当たり前の報道協定だとかも当時はなかった事を理解しておく必要がある
躊躇、葛藤、達成感、後悔……
当時の緊張感を再現した、フィルムの作り方がすごかった。
中継スタッフによる、「これを放送していいのか?」とか、「死人が出た責任は我々にないのか?」という躊躇、葛藤、達成感、後悔……ドロドロした感情が次々に描写されて、引き込まれました。
まだ世界がテロに初心(うぶ)で、西ドイツは第二次世界大戦の反省から極度の平和主義を定めた憲法で他国の軍や警察を受け入れないことを定めていたため、訓練されていない町の警察官たちが対応し大惨事へ発展って展開だった模様。
もちろん、報道管制とか、犯人の立てこもるビルの電気を落としてTV中継を犯人に見せないなどのノウハウもなく。
各国の警察にテロ対策チームが作られ、オリンピックや各国際イベントでのテロ含めた警備体制が構築され、選手村や施設には関係者以外立ち入り禁止となった今に至る、きっかけの事件だったらしいですので、その歴史を知るという側面でも有意義な作品でした。
裏はしっかり取ろう
とにかく地味、ひたすら地味な作品。でも、『スポットライト』や『記者たち~衝撃と畏怖の真実~』といった報道メディアの実録もの映画が大好きな者としては大好物。知る権利、報道のモラル、被写体の人権など、テーマの切り口はさまざまなこの手のジャンルは普遍ゆえに現在でも通じる。折しも本作で扱われる人質テロ事件も、終わりの見えないパレスチナ・イスラエル紛争とリンクしているわけだし。
この事件が複雑なのは、発生地がドイツのミュンヘンという点。ナチスの影を払拭すべく、人質となったイスラエル選手団救出を半ば“贖罪”とイコールにしたドイツ。ところがその結末があまりにも皮肉。
「裏を取る」のはマスメディアに携わる者としては怠ってはならない作業。しかし昨今はフェイクニュースという言葉が独り立ちしてしまうほどになっている。一応メディアに属する者として、本作のABCスポーツ番組クルーは他人事としては見られない。
ただ残念なのは劇場用パンフレットが作られなかった事。前述したようにこの事件は今のパレスチナ・イスラエル紛争ともつながっているのだから、事件が起きた背景を網羅したパンフはあっても良かったのでは。
ものすごい緊迫感だけど
オリンピック開催中に発生したテロ事件を、警察でも、犯人でもなく、報道目線で描いています。
スマホもない、デジカメもない、ネット回線もない時代。情報も限られているが、事件は目の前で起きている。なんとしても報道したいという思いと、かたや、報道すべきか?という葛藤も含めて、緊迫感がひしひしと伝わってきます。
一方で、事件が最悪の結果を迎えた中、現場を仕切っていた人たちが、どんな気持ちだったのか、特に、現場を任されていた主人公の心情も、もう少し描いて欲しかったと思います。皆さん、報道の現場の人間とはいえ、元々、スポーツを担当するクルーだったわけだし、悲しい結果に、尋常な精神状態ではなかったと思います。
ドイツ人のスタッフは、最後に、大丈夫か?と尋ねられて、気持ちを語る場面がありましたが、それを尋ねていた責任者も、上司から、明日も頼むと言われて、はい、わかりました・・・だけではない、ものすごく複雑な気持ちがあったと思うのですが、どうなんでしょうね?
メディアの意義
報道の矜持を感じました。
全くスリル、臨場感なし。
制作者側にマドンナの元ダンナ!
1972年ミュンヘン五輪といえば、バレー好きの私からしたら、全日本男子バレーが唯一の金メダルを取ったオリンピックとして語り継がれている程度の知識しかなく、裏でこんな悲惨な事件があったとは…。
今は亡き松平康隆監督の元、クイック、時間差攻撃、ジャンプサーブ、天井サーブ…今の速攻コンビバレーの原型を産んだ伝説の12人の印象しかないほど、日本は男子バレー初の金メダルに浮き足だってた印象しかありませんでした(いえ、直接当時の試合を見てたわけではなく、よく秘蔵映像として以前のバレー経験者なら繰り返し見ていました)。
その時起きた人質テロ――五輪史上最悪の事件として、今もなお語り継がれている歴史的な1日を基に描かれている作品が本日昼の回でバンクーバー公開が最後ということで、雪がチラつく中観に行きました。
日本人選手のメダルラッシュに沸いた夏が記憶に新しいオリンピック。その長い歴史の中で今なお大会史上最悪の事件として語られるのが、1972年9月5日、ミュンヘンオリンピック開催中に起きた、パレスチナ武装組織「黒い九月」によるイスラエル選手団の人質事件。本作は、突然世界が注目する事件を中継する事になったTVクルーたちの視点で、事件の発生から終結までの1日を90分間ノンストップで描いています。
第82回ゴールデングローブ賞では作品賞(ドラマ部門)、第97回アカデミー賞では脚本賞にそれぞれノミネートされていますので、ご興味のある方はぜひ。
主人公を演じたジョン・マガロが「(1972年)9月5日(セプテンバー5)にニュースの歴史が変わった」と語る本作は、1972年のミュンヘンオリンピック開催中、パレスチナ武装組織「黒い九月」に襲撃されたイスラエル選手団11人が犠牲になったテロ事件を題材に、緻密な脚本と重厚な映像で圧倒的な緊迫感を描き出した社会派映画となっていて、このイスラエル選手団人質事件は、選手団11人の他に、警察官1人と犯人5人の合計17人が死亡しました。
「脚本を読んですぐにやると決めた」と脚本に惚れ込んだショーン・ペン。「全員のエネルギーが生み出した至極の作品だ」と本作の完成度に自信を見せているとのことでした。ピーター・サースガードもまた「見事な脚本で、物語の伝え方を熟考してある」と、ティム・フェールバウム監督自身が執筆した緻密な脚本を絶賛しています。
フェールバウム監督とともに脚本を書き上げたモリツ・バインダーは「1972年の事件を新しい視点で届ける。現代に生きる人にこそ見てほしい」と熱く語り、本作ではプロデューサーに徹したペンも「最高の美術チームが作り上げたセットが、俳優の魅力を引き上げると証明した」とセットデザインにも凝っていることを語りました。
1972年当時の中継スタジオを徹底的に再現するため、製作チームは個人収集家や博物館、放送局の倉庫に至るまで調査。フェールバウム監督やキャストたちも、セットの隅々に置かれた実際に動く1972年当時の機材に「(本作が描く1972年当時の)世界に入り込める」と口を揃える。CG合成のブルーバックの前で演技するのではなく、セットにある実物に触れて体感でき、半世紀もの時間を自然にタイムスリップできる撮影現場に感動しきり。
本作の大部分は、事件が起きたミュンヘンで撮影されていて、今回撮影された映像と1972年当時の映像を組み合わせて、色合いなんかもかなりリアリティを感じましたし、編集のハンスヨルク・バイスブリッヒは「観客が物語に没頭できるようにテンポの速い作品にしたかった」と、本編を96分に凝縮し圧倒的なスピード感で観客をエンディングまで誘う編集の意図を語っています。
ドキュメンタリー作品ながら、特にリアルなドンパチシーンもなく、全体的には静かな作品ですが(後ろの席からイビキが聞こえましたw)、オリンピックがビジネスだけでなく政治的にも利用される所以はこの事件だったのかと思わされましたし、国際関係、警察の対応、テロ対策、マスコミの報道のあり方など、多面的に考えさせられました。
多少退屈に思われるかもしれませんが、エンディングロールの後、制作、俳優陣へのインタビュー動画がありますので、ぜひ最後まで席を立たずにご覧下さい。
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