「世界初のテロ生中継に何があったのか……」セプテンバー5 よしてさんの映画レビュー(感想・評価)
世界初のテロ生中継に何があったのか……
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ミュンヘンオリンピックで実際に起こったテロ事件を当時世界中継したアメリカの放送局ABCの内幕もの。
1972年の出来事ですから、当然、ネットも携帯電話もない時代。
目と鼻の先の場所で起きているテロについてどのように情報を仕入れ、その裏を取り、どのように伝えるか、といった裏側が克明に描かれます。
事件そのものはスピルバーグの『ミュンヘン』でも出てきているものですから出来事としては知っていました。ただ、それを報じたのは報道局のスタッフではなく、現地で中継をしていたスポーツ局のスタッフであり、早朝でカメラマンすらまともにいない状況で中継を始めていたことには驚きです。
また、国際中継であるためライバル局との時間の割り当てなどでも交渉がなされていたり、犯人が見ることを想定せずに映像を流してしまったため、テロ対策にも悪影響が出てしまうなど、かつて誰も経験してないが故の逸話なども含まれています。
邦画でも、一幕ものでテロをテレビ番組で扱うことを一つのテーマとした作品がありますが、こちらは事実ベースであり、その緊迫感や事件そのものと対峙したときのリアリティはまるで違うものでした。
本作や「ブルータリスト」といったユダヤ人の悲劇を描く作品が、なぜこのタイミングでというところに引っかかりはしますが、作品としては極上の逸品です。
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