「世界丸見え」セプテンバー5 自分BOXさんの映画レビュー(感想・評価)
世界丸見え
面白くなかったわけではないんですが…
1972年、ミュンヘンオリンピック開催中にパレスチナ武装勢力がイスラエル選手団の宿舎を襲撃し選手11人を人質にする事件が発生。現場の近くにいたことから事件の中継を敢行することになったアメリカのスポーツ中継のTVクルーをドキュメントタッチで描く。
うん、面白そうだ。興味をそそられるし、しかも実話ベース。作品の求心力になっているのは生中継の裏側と事件の顛末。
作中ほとんどが中継ブースからの視点で、アメリカ本土のテレビ局と放送枠を確保する為の丁丁発止のやり取りとか運び込まれる素材フィルムをピストン運行で現像していく様やデジタル技術がない時代の急きょのテロップの入れ方など70年代のテレビ中継の緊迫した裏側という、お仕事描写はなかなかの物。
事件の結末についてはネタバレなので言及は避けるとして、全体としての評価は「地味だけど悪くないんじゃない?」くらいなんですが……
「この映画から何かを受け取ったか?揺さぶられる物があったか?」と問われたなら、うーんと唸ってしまう。
報道の自由とそれに伴う責任や放送される被害者の人権など、今作が放送倫理の問題を提示しているのは間違いないんですがそこに「今までもいろんな媒体でやってるし何回も聞いた」問題提起以上の事が感じられないんだよなぁ。私が鈍いのかしら?
なんだか、今さら「ネットの情報には嘘もあるから鵜呑みにするのは危険」とドヤ顔で注意された時に「うん知ってる」と、まったく心が動かないあの感じに似ている。
結果「なるほど、こんな事があってそんな結末になったのか」という好奇心と知識欲は満たせたものの、それ以上はなく、凄く良く出来た『世界丸見えテレビ特捜部の再現ドラマ』を観たような気分でした。