「タイトルなし(ネタバレ)」セプテンバー5 りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
タイトルなし(ネタバレ)
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1972年9月5日。
西ドイツ・ミュンヘンでは平和の祭典オリンピックが開催中。
選手村を、パレスチナの武装組織「黒い九月」が襲撃。
イスラエル選手団のコーチや選手を人質にとった。
現場周辺には多くの報道陣がいたが、テレビ生放送の設備を備えたのはABCのスポーツクルーのみ。
まだ生放送が一般的ではない時代だったのだ。
彼らは、テロ事件の一部始終をつぶさに放送することを決断する・・・
といった実録物語。
いわゆる、72年のミュンヘン五輪「黒い九月」事件を描いたものだが、同題材の過去作には『テロリスト/黒い九月』、スピルバーグ監督『ミュンヘン』がある(いずれも未見)。
が、本作はを報道側から描いた意欲作。
現在と比べると乏しい器材、乏しい情報のなかでの報道という、ある種「プロジェクトX」的な側面の面白さもあるが、人間の生命がかかった緊張状況、その側面を楽しむだけにはいかない。
ただならぬ緊張感が続く90分。
さらには、事件そのものの結末も「負け戦」であり、報道そのものも「世紀の大誤報」ともいえる報道を行ってしまうことになり、無力感が凄まじい。
事件を報道し続けるクルーたちは、現在のウクライナやパレスチナの混沌とした情勢を見続けるしかできない我々でもあるから、無力感をひとしお感じるのだろう。
出演者は、ジョン・マガロ、ピーター・サースガード、ベン・チャップリンと地味だが滋味。
三者三様の立場の描き方も興味深い。
英独通訳役のレオニー・ベネシュの気丈夫ぶりも印象に残る。
『シビル・ウォー/アメリカ最後の日』とあわせて観たい作品です。
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