劇場公開日 2025年2月14日

「報道とは?知る権利とは?を考えさせられる」セプテンバー5 kenshuchuさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5報道とは?知る権利とは?を考えさせられる

2025年2月16日
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鑑賞方法:映画館

ミュンヘンオリンピックで発生した人質テロ事件は、スピルバーグ監督の「ミュンヘン」で観て概要は知っていた。本作はそれを報道するアメリカのTV局から描いた物語。
あくまでテレビクルー側からしか描かないから情報は断片的。物語のほとんどがオリンピック中継を行うためのサブ室で進むし、手に入った情報もドイツ人の翻訳がないと内容が理解できないという限定され状況だからかなりリアルだ。そんな中、衛星放送枠の取り合いや、報道局との主導権争いなども交えつつ、人質立てこもりの状況を生中継していく。
テロの悲惨さや非道さを描いている映画とは思えない。そんなシーンがないから。本作で問いかけているのは報道のあり方だ。様々な困難を乗り越え、生中継を続けたアメリカのテレビクルーを称賛する内容なのか。それともテロリストたちに筒抜けとなった生放送を反省すべきという主張なのか。どちらなのかは観ている人に委ねられている。個人的にあのテンポがよく緊迫感のある作りは、テレビクルーの活躍を描くものとして見応えがあったことは確か。でも観終わった後に感じてしまうのは、これでよかったのかという迷いだ。
「知る権利」を満たすものとして報道がそこで起きている事件を映すことはとても重要で必要なことだと思う。ただ、それを報道する側のモチベーションはそれだけではないということ。会社員である以上、この仕事でどう評価されるか、そして報道する側としての達成感みたいなものは当然つきまとう。中継を観ている人間がただの興味本位で観てしまうこともどうなんだろうかと思ってしまう。
だから、本作を観ている自分が映画の中の生中継をエンタメとして興味本位で観ている側であることに気付かされる。自分みたいな興味本位で観たがる人間がいる限りこんな報道姿勢はなくならない。観終わった後にモヤモヤする気持ちはこれなのかもしれない。色々と自分に問いかけることとなった映画だった。

kenshuchu
小町さんのコメント
2025年2月17日

共感、コメント、フォローありがとうございます!
フォロバさせて頂きます。
よろしくお願い致します。
知る権利という名の興味、ほんとそうですね。
そう思うと私はあのテレビ局の方々と同じだと罪悪感が出てきます。

小町
小町さんのコメント
2025年2月16日

終わりの2文にとても共感です。
読ませて頂いて上手く言い表す事ができなかった私の気持ちがすっきりできました。
素晴らしいレビューありがとうございます!

小町