「事件は現場で起きている、そして、バッドエンドへ」セプテンバー5 まつだ𝕏ですがなにか?さんの映画レビュー(感想・評価)
事件は現場で起きている、そして、バッドエンドへ
先日LoveFM(福岡市)の朝ワイド番組『Top of the morning』内で紹介されたことで興味を持ち、元々ミュンヘンオリンピック事件のことを少しは知っていたが流れまでは押さえていなかったので、ムビチケが当選したのもあり早めに観ることにした。
【事件は現場で起きているんだ!】
1972年のミュンヘンオリンピック(当時西ドイツ)の選手村に過激派テロ組織『黒い9月』が侵入し、イスラエル選手団を人質に立てこもった事件当日の9月5日、ジェフリーやルーンをはじめとする米国ABCテレビのオリンピック取材チームは急きょ事件現場の選手村からの中継を行うことになった。
米国の本社と取材の主導権をめぐる争いが起こるも「事件は会議室で起きてるんじゃない!現場で起きてるんだ!」と言わんばかりに報道部門ではなくオリンピック取材チームが中継を主導。
奇跡的に現場を脱出した選手のひとりをインタビューしたり、取材クルーを米国選手団に偽装して現場に突入させたり、ラジオを改造して警察無線を傍受したり…と、通常ではあり得ない手段で中継に臨んだ。
ドイツ人通訳・マリエンヌの力もあり、情報収集は進む。
【ぬか喜びとバッドエンド】
しかし、ほぼ同時期に起きた日本の『あさま山荘事件』に似て事件の推移がテレビ中継され(9億人の視聴者が観たという)、警察の動きが過激派に筒抜けになったことで警察の作戦に支障が出たことで中継チームが警察の圧力で一度潰されそうになった。
その後、あることで取材チームは『ぬか喜び』状態に陥る。
これは事件のことを少しでも知っている人には辛い展開である。
この『ぬか喜び』、もし自分たちがあの中にいたら批判できるだろうか。
裏も取れてないのに軽々しくニュースに流すな、というルーンの忠告が痛い。
結果として事件は悲劇で幕を閉じる。
1970年代の世界情勢を知っていると当時の空気感を思い出すことができるだろう。
あとは、放送技術(特にテレビ局)に関心がある方だとより興味深く観ることができるのではないか。
事件の後日談にも興味がある方は、その後のイスラエル諜報機関『モサッド』と『黒い9月』の攻防がテーマの『ミュンヘン』もご覧になると良いだろう。