「視聴率と人命」セプテンバー5 さとうきびさんの映画レビュー(感想・評価)
視聴率と人命
1972年ミュンヘンオリンピック開催中に発生した、パレスチナの過激派によるイスラエル選手団の人質事件を題材としたドラマです。
オリンピックの衛星中継を担っていたアメリカのテレビ局が、テロ事件の推移を全世界に実況中継することになります。
まるでドキュメンタリーのように、音楽なども最低限に抑えられた地味なつくりがリアリティを増していました。
ニュース報道の専門家ではないアメリカ人のスタッフたち、責任者たちは視聴率、特ダネという甘い誘惑と、人の命がかかっているという今まで経験したことのない深刻な状況の中で瞬時の判断を迫られて揺れ動きながら、さながら「カメラを止めるな!」のごとき緊迫感を持って次々とカメラを切り替えながら映像が繋がれてゆきます。
また、これまでは迫害されたユダヤ人側から描かれることが多かったホロコーストがドイツの一般の人々の心に残した傷跡を伺わせる言動の数々がストーリーに重みを加えています。
ダイヤル式の電話機、チャンネルを回すテレビ、携帯無線、喫煙…1972年当時を彷彿とさせる、もはや博物館級となってしまったアイテムが印象に残りました。
若い世代の人は「これは何?」という印象を持たれるかもしれません。
映像にキャプションを入れる方法のアナログさ加減ときたら仰天ものです。
「ありふれた教室」で主役の女性教師を演じたドイツ人女優、レオニー・ベネシュがテレビ局の現地ドイツ人スタッフとして熱演。素敵でした。
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