消滅世界のレビュー・感想・評価
全33件中、21~33件目を表示
近親相姦??それ、他の言語に訳しても通じますかね?
本日は、多くの映画館がサービスデイとしている毎月の“ファーストデイ”の中でも特別な「映画の日」。このアニバーサリーにチョイスしたのは、来年1月12日での閉館が発表されている新宿シネマカリテで今週公開の『消滅世界』です。元々、事前に公開スケジュールを確認した際に、“蒔田彩珠さん主演”と言うことのみで鑑賞候補にしてありましたが、今回もトレーラーやあらすじは目にすることを避けての鑑賞です。
本作は“パラレルワールドの日本”が舞台となるSF作品。近年における情報量、そしてその伝達速度が爆発的に上がったことで、“過去の常識”に対する書き換えへのハードルが格段に下がり、或いは「こんなこと起こるはずがない、、とは言い切れない?」と錯覚してしまいそうな世界観で語られます。ただ一方、作中において語り手たちの主語に用いられがちな「人」や「世界」などの馬鹿デカい分母で、どうやら政府や自治体が主導し“政策”とされているようですが、さすがにそこまで裏付けて映像化できるほどの予算も(或いはアイデアも?)ないためか、殆どが建物内か屋外であっても当たり障りのない場所で、基本、メインキャラクター達による会話劇。そのため、残念ながらそこには人種や宗教、政治イデオロギー、そして格差などの多様性は“存在していない”としか考えられない世界観でもあり、その辺りのリアリティとの距離感は村田沙耶香さんの原作で確認したいところ。少なくとも映画としては、あまり巧いとは感じませんでしたし、ストーリーも私には残念ながらつまらないと感じました。
勿論、私と違う意見をお持ちの方も多いでしょうし、元々、想像力の乏しい私には不向きなだけかもしれませんが、この手の邦画、最近の作品でいうと『徒花 ADABANA』とか『本心』とかも同様、画期的な技術革新に対して外国人の存在が一切感じられないガラパゴス状態もまた、都合がよくて軽薄に見えてしまうところかと感じます。
とまぁ、苦言ばかりになってしまいましたが、少なくともそれぞれのキャラクターを違和感なく見せるキャスティングと、役者たちの演技はしっくりきてハマっていると思います。中でも朔役の栁俊太郎さん、雫役の霧島れいかさんは既視感すら感じるほどの自然さでしたし、雨音役・蒔田彩珠さんは今作でも大変印象に残る演技で期待に応えてくれています。
それにしても、その関係性における行為を“近親相姦”と称することに違和感を感じないって、、、とこれは、芥川賞作家の原作そのままの表現なようなので受け入れるべきなのか。。やはり原作(河出書房新社)もいずれ手に取らなきゃだな。いやはや、何だか疲れました。。
村田沙耶香のこの小説は着目してたから、少し楽しみでもあった。蒔田が...
村田沙耶香のこの小説は着目してたから、少し楽しみでもあった。蒔田が良かった。眞島などの脇も良かった。お母さん役はミスキャストか。
恋愛を家庭の外にという話は、どんどん社会と親和性を持っている。とは言え、性愛は別にしても、恋愛感情は愛情と切り離せるものではないから、やはり無理がある。
刺さらなかった世界観
蒔田さんの、ラストの表情変化が圧巻。
興味深い設定ながらも少し忍耐を・・・
概念と言葉遊び
家庭内での性交渉が異常とされ、恋愛は外で若しくは2次元とが正常とされ、子供は人工受精が正とされる近未来の話。
性欲とかそれに伴う快楽とか、妊娠出産とかが無く、子供は全て人工体外受精の体外培養とかで出来る世界ならまだわからなくもないけれど、これで言ったら結婚せずに恋人として交尾をするのは正常な訳で、そこで子供が出来たらどうなんの?それが約1割?となんだか良くわからないし、設定が無理スジ過ぎ。
その癖家事や子育ては女性がするもの、子供を育てる人は「お母さん」?なんだそれ?
ちなみに言葉の意味が変わっているみたいなフォローはしていたけれど、夫婦は血縁の無い家族だから近親相姦にはなりませんよ。
正常と異常がなんちゃらと言いたいのかも知れないけれど、それにしちゃあ理屈が通っていなくて残念。
「エデンに行こうと思ってる」への「チバに?」のわざわざの言い換えは吹き出しそうになった。
女性らしい視点。
正常という名の異常
冒頭から、いつまでも解消される事ない違和感。
政府やマスコミに押さえつけられてるわけではなく、抵抗せず、漂白された無機質の世界で、感情を出さず清潔な会話をする。
とてつもない違和感。
そして、それが常識であり、正常だと言わんばかりに、当たり前の様に受け入れる。
正常という名の異常。
この異常さは、物語後半の実験都市エデンに向かうに連れ、加速度を増してゆく。
ジョージオーウェルの「1984」や、テリーギリアムの「未来世紀ブラジル」と同じディストピアではあるが、無機質であるはずなのに滑り気
があり、もっと苦痛度が高い。
だが、この映画の住人も、観ている我々も何故かこの世界に魅了されている。
まるで心地良い拷問のようだ。
それはきっと原作の村田沙耶香のイノセントで生々しい世界観と、それを映像に落とし込んだ川村監督の力ではないだろうか。
解釈は人それぞれ。その先にあるのとは…。
完成披露試写会
文学的表現の最上級映像作品
先日、映画『消滅世界』の試写会に参加しました。
上映前には川村監督と主要キャストによる挨拶とトークが行われ、
和やかな空気の中にも作品への確かな熱量が感じられました。
印象的だったのは、監督が俳優たちに演技プランを提示する際、
音楽担当・D.A.N.による主題歌を聴かせたというエピソード。
音から物語のトーンを共有する——
その手法に、この作品の繊細な世界観の根源を垣間見た気がしました。
そして、いよいよ本編へ。
原作を既読の身としては、やはり映像化のバランスが気になるところでしたが、
結果は見事。
115分があっという間に感じられるほどの完成度でした。
原作に忠実でありながら、単なる再現に留まらない。
性的な描写をあえて直接描写せず、
観るものに想像の余地を残し、あとは各自それぞれの情動に託す——
監督の手腕と映像的センスを垣間見るようでした。
何より圧巻だったのは、蒔田彩珠の演技。
彼女が体現する「消滅」と「生」の境界には、息を呑むようなリアリティがありました。
ラストシーンは、静かな絶望と美しさが同居し、まさに鳥肌ものの瞬間です。
映像は端正で、どのカットにも意識的な構図が感じられる。
原作の印象的な台詞や世界観を損なうことなく抽出し、
読者でなくともこの異質な世界に自然と引き込まれるでしょう。
最後まで一切の冗長さがなく、緊張感を保ったまま着地する作品でした。
公開日が待ち遠しい。
静謐でありながら確かな余韻を残す、今年屈指の文学的映像体験です。
全33件中、21~33件目を表示







