「近親相姦??それ、他の言語に訳しても通じますかね?」消滅世界 TWDeraさんの映画レビュー(感想・評価)
近親相姦??それ、他の言語に訳しても通じますかね?
本日は、多くの映画館がサービスデイとしている毎月の“ファーストデイ”の中でも特別な「映画の日」。このアニバーサリーにチョイスしたのは、来年1月12日での閉館が発表されている新宿シネマカリテで今週公開の『消滅世界』です。元々、事前に公開スケジュールを確認した際に、“蒔田彩珠さん主演”と言うことのみで鑑賞候補にしてありましたが、今回もトレーラーやあらすじは目にすることを避けての鑑賞です。
本作は“パラレルワールドの日本”が舞台となるSF作品。近年における情報量、そしてその伝達速度が爆発的に上がったことで、“過去の常識”に対する書き換えへのハードルが格段に下がり、或いは「こんなこと起こるはずがない、、とは言い切れない?」と錯覚してしまいそうな世界観で語られます。ただ一方、作中において語り手たちの主語に用いられがちな「人」や「世界」などの馬鹿デカい分母で、どうやら政府や自治体が主導し“政策”とされているようですが、さすがにそこまで裏付けて映像化できるほどの予算も(或いはアイデアも?)ないためか、殆どが建物内か屋外であっても当たり障りのない場所で、基本、メインキャラクター達による会話劇。そのため、残念ながらそこには人種や宗教、政治イデオロギー、そして格差などの多様性は“存在していない”としか考えられない世界観でもあり、その辺りのリアリティとの距離感は村田沙耶香さんの原作で確認したいところ。少なくとも映画としては、あまり巧いとは感じませんでしたし、ストーリーも私には残念ながらつまらないと感じました。
勿論、私と違う意見をお持ちの方も多いでしょうし、元々、想像力の乏しい私には不向きなだけかもしれませんが、この手の邦画、最近の作品でいうと『徒花 ADABANA』とか『本心』とかも同様、画期的な技術革新に対して外国人の存在が一切感じられないガラパゴス状態もまた、都合がよくて軽薄に見えてしまうところかと感じます。
とまぁ、苦言ばかりになってしまいましたが、少なくともそれぞれのキャラクターを違和感なく見せるキャスティングと、役者たちの演技はしっくりきてハマっていると思います。中でも朔役の栁俊太郎さん、雫役の霧島れいかさんは既視感すら感じるほどの自然さでしたし、雨音役・蒔田彩珠さんは今作でも大変印象に残る演技で期待に応えてくれています。
それにしても、その関係性における行為を“近親相姦”と称することに違和感を感じないって、、、とこれは、芥川賞作家の原作そのままの表現なようなので受け入れるべきなのか。。やはり原作(河出書房新社)もいずれ手に取らなきゃだな。いやはや、何だか疲れました。。

