配信開始日 2025年12月18日

「映像で語ってくれないか」10DANCE ipxqiさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0 映像で語ってくれないか

2025年12月18日
iPhoneアプリから投稿

な?
原作者の意向とはいえ、想像以上にくっきりはっきりBLしててえらい。
「国宝」の匂わせ(個人の感想)とは真逆のベクトルです。
地下鉄のシーンはドラマ上必要だとは思うけど、それよりベサメ・ムーチョとその後のタンゴのシーンが数倍エロい。ダンスという抽象化を通してやり取りされる感情こそ大変BL的だと思うわけです。

初めて原作マンガのコンセプト、そしてそれを基にしたダンスの動画を観た時、脳に雷が落ちるレベルの衝撃を受けたのを覚えている。異性愛規範の権化のような社交ダンスを男+男で、もしくは女+女で優雅に踊ってもいいんだ!
「少女革命ウテナ」以来の、大げさに言って未来に希望を感じるレベルのインパクトだった。
今回、その衝撃を超えるかといったら正直80%くらいなんだけど、とはいえ文字通りの「映像化困難」を短期間でしかもこの日本の映画界でよく完遂したなぁという感銘はあった。
あと足りないのは劇場公開だけ!

ただ大友啓史作品ってこれまであんまり良いと思ったことがなくて、またもその予感は本物だった。
もしくはプロデューサーの要請か?とにかくブラックプールでの「茶番」のオナーダンス、あの解説ナレーションみたいのはなぜあんなに長いのかな?
軽く一言誘導してくれたら、あとは映像見てたらわかるようなことを永遠クドクドと…せっかくの顔で笑って心で泣いて、という一世一代のダンスパートなのに、不粋な文字面がずーっと追ってくるの。あそこだけ字幕をオフにしたい。
そんなに観客に伝わるか不安なのかな?映画監督でしょ、映像のパワーを信じてよ、けいし!

もしあそこを最小限の説明で見せてくれたら、おそらく映画として本気で感動していたし、主演2人のがんばりもさらに報われたのになー。もったいなし。

あと、なにげない場面でフィットしてるかよくわからない劇伴がうっすらかかるところも寒々しい。。それから飲み屋とかの外国人エキストラの配置、これははっきり下手ですね!しゃーないとは思うがわかりやすく目立つ、嘘くさい。

ただ演目パートは「国宝」よりは見ごたえあった。なにしろ割とガチで(全身が映るとか長回しなどで)たっぷり見せてくれるんで。
公開前イベントでのトークは「国宝」よりハラみが薄くて(李監督は理由を説明せずにリテークするとか。キューブリックかよ)好感度高かったけど、監督のハードルはいずれも鬼。大差ない。
あと背景に見切れるプロの動きがヤバすぎるのも同様。とくにボールルーム勢が一瞬で目を奪う鮮やかさ。

謎にノイズだったのはダンス雑誌の記者たち。
いわゆるスポーツものの試合で「すごい◯◯だ!」とか説明する役目だと思うんだけど、いざダンスが始まると空気になって何の役にも立ってない。
とくに大ラスのダンスパートに出てこない。いやいや、あれこそ異常事態が起こってるんだから出番じゃない!?ちゃんと外の世界のざわつきを代弁してよ!謎のマイクパフォーマンスはいらないからぁー!そういうベタな演出を欲してるんだって!

ちなみに(予告がキマリすぎて)原作をだいたい読んだけど、2人が再会を誓うくだり、あんなパプリックな場でやってよいシーン?私ならあんな場面見せられたら悲鳴をあげて倒れる自信あるけど、おかしい、誰1人叫んでないじゃないか!
原作では楽屋の廊下が舞台だったような気がしたので、記者たちはそのために出したんだと思ったのになぁー。結局あの人たちis何?

とはいえとくに実写化がめちゃくちゃむずかしい鈴木信也というキャラを、竹内涼真は思いのほか乗りこなしており、きちんとリアリティを与えていた。町田啓太も時折人の良さを隠しきれていなかったが、とにかく「帝王」を立体化しようと終始がんばっているのは伝わった。ブランクからダンスへ。いよ日体大!

ipxqi