「アマチュアではない笑」アマチュア インステアさんの映画レビュー(感想・評価)
アマチュアではない笑
冒頭こそ冴えない内勤のCIA職員として描かれているが、本当にそこだけでアマチュアではなかった。考えてみれば007シリーズで唯一ボンドを殺した(致命傷を負わせた)ヴィランのラミ・マレックが脆弱スパイなわけがないのである。
最初の方は主人公がギーク(オタク)キャラっぽく、リュックを背負ったりしてて、花形のジャイアンタイプの凄腕スパイにいじられたりする様子が描かれるが、上司を脅して訓練に入るあたりから「キングスマン」方面へ行くかと思いきや、そっちはそんなに苦労した様子もなく、元々の知性と、妻のための復讐というモチベーションで、それ以降は完全に「ボーン」シリーズ。モヤモヤする展開かと思いきや、わりとバサバサと敵を派手に殺していくので、楽しく観ていられる。
「007」のQや、「ミッション・インポッシブル」のルーサーなど、どのスパイ映画でもハッカー役は凄すぎて、なんなら主人公なしでもハッカーキャラの活躍だけで結構危機を乗り切れちゃうんじゃないかと思わされるが、これはまさしくそういう映画。ラスボスを嵌めるに至ってはハッキング能力凄すぎなうえ、現場のスパイとしても度胸据わりすぎ。
要するに、ギークの観客に、スパイとして活躍する夢を与えるという意味で、「妻のための復讐」と、当初はギークだという入口を設けて、あとは勧善懲悪スパイ物という感じ。つまりスパイの「なろう系」なのだが、訓練後のスパイ像が007的な方向ではなくジェイソン・ボーンなので、訓練自体も「キングスマン」や「レモ第一の挑戦」のようなファンタジックな味付けにならず、リアル寄りの重さがそれなりに維持できていたのがよかった。
ただ「アマチュア」だったのは最初の15分ぐらいかな? ラミ・マレック主演のボーン・シリーズ単体作と考えればOKじゃないでしょうか。