「リバー、別れないでよ」光る川 uzさんの映画レビュー(感想・評価)
リバー、別れないでよ
『悪鬼のウイルス』と『Sin Clock』でそれぞれ印象的だった、華村あすかと葵揚を目当てに。
冒頭は取っ掛かりづらかったが、紙芝居の枠から過去に移る演出にシンプルながら上手さを感じた。
そこで描かれる悲恋の話は、ベタベタのテンプレ。
お葉と朔が惹かれ合った理由なども特に語られないが、紙芝居の内容と捉えればそんなものだろう。
華村あすかの顔…違った、肌が綺麗すぎたり言葉が今っぽかったりはある。
しかしそれが見やすさにも繋がっており、イントネーションで没入感を損なわないラインは保たれていた。
どこまで意識的に作られたのか、脇とのバランスも適切。
現代に戻ってからも特に捻りはなく、都合のよい童話的な話になってゆく。
しかし、枝郎が喋れなかったことやお葉の入水シーンのアングルなど、脚本からカメラまでが効いてくる。
有山実俊くんが兼役なのも意味があった。
あれは過去の事実なのか、改変が起きたのか、それとも時間の狭間の夢か…
どれであってもおかしくない余白が非常に巧み。
そういった仕掛けと質の高い芝居、そして魅力的な画作りによって、大人が観られる御伽噺になっていた。
まぁあの条件であれば、自分なら彼の半分も水は汲まないが。笑(台無し)
特に印象的だったのは、葉や苔、川の水などの緑。
光と影、晴れと雨などシーンによって素朴さや神秘性、畏ろしさなど様々な自然の側面が表れていた。
演技としては安田顕が圧巻。
声色だけでなく、姿勢で背を小さく見せて(周りが高身長なのもあるが)あの時代の男らしく映っていた。
華村あすかの美しさや、綺麗なあばれる君こと葵揚の不器用な雰囲気もハマり役。
オープニングのアニメーションからエンディングのBGMまで、よく纏まった秀作だと思う。
冒頭の映像素晴らしかったですよね。私はその中の題字にとりわけ惹かれました。ポスターで使われている文字ではないので、何か大人の事情があるのかもしれませんが、背景のグラフィックともピッタリでした。