「言語化できない感情」ドライブ・イン・マンハッタン クックーさんの映画レビュー(感想・評価)
言語化できない感情
登場人物二人の会話劇。ただの会話で物語が成り立っている。
狭い車内に男女が二人…何も起きないはずがなく…
なんてことはなく、本当に何も起きない。
それでも不思議と退屈しない。
脚本の軽妙さもさることながら、二人の感情を表す何気ないシーンの切り取り方がうまいのだと思う。舞台劇ではなく映画だからこそできる見せ方だと思った。
最初は人生経験の浅いねーちゃんを老いたタクシードライバーが諭す流れかぁなんて思いながら見てたけど、最終的には二人の心情に絆され、すっかり感情移入してしまっていた。
最後の告白のシーンでグッとくるものはあったが、泣くまでにはいたらなかった。
…のだが、エンディングのスタッフロールが流れる最中に涙がとめどなく流れ出て止まらなかった。本当に驚いた。
なぜ涙が止まらないのか全然わからない。
必死に止めようと思っても後か後から溢れてくる。不思議な感覚だった。
会話の中身も世間にはありふれた話で、二人の生い立ちが特別なわけでも、波乱万丈があるわけでもない。本当によくある話だ。
それでも世の中の一人一人に人生があり、感情があり、ドラマがある。
きっとスマホの向こうのしょうもないおっさんにしてもおそらくそうだろう。
人の姿は一面では捉えられない深さがある。そう思わせるのに十分な映画だった。
ここまで感情を揺さぶられたら文句なく★5にしたかったけど、正直なんで自分の心がここまで震えたのか全く説明できないし、どうやって他人にお勧めすればいいのか悩ましいので0.5だけ減ずることにする。
脚本・演技・構成、どれをとっても本当に見事な映画だった。
それにしてもなぜこんなにも自分に刺さったんだろう…不思議だ…。
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