「「教授」は尚も生き続ける」Ryuichi Sakamoto | Playing the Orchestra 2014 猿田猿太郎さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0「教授」は尚も生き続ける

2025年1月13日
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鑑賞方法:映画館

 ただのコンサート。されどコンサート。映画音楽も多く交えていたため、劇場公開の意義は大きい。勿論、ライブで生演奏を聴きたかったところだけれど、迫力有る劇場のスピーカーで視聴出来て大いに満足です。特にラストエンペラーは圧巻のド迫力。
 前半はどうやって楽譜に書いているのか判らない難解さで、その分、緊張感が半端ない。やがて判りやすくも迫力の映画音楽に至り、教授も息を切らせながらの熱演振り。YMOの時代から既に遠く、美しくもすっかり白髪なのに、表情は生き生きと豊かで、お歳を召されているようにはまったく見えない。尚も生きておられるかのような存在感。音楽は音を楽しむものと云うものの、せめて映像で演ずる姿を見るのはやはり楽しいですね。
 映画音楽というものは、いわば、時に映画の背景・壁紙でしかなく、オーケストラの演奏者はそれの更に縁の下の存在。でも実際に演奏するその姿は更に素晴らしく、裏方などと聞き流すには勿体ないと再認識。観客からブラボーの声と万雷の拍手を受け、それに大いに応えつつも、自分自身も大いにオーケストラの皆さんを讃える、その「教授」のお姿が印象的でした。
 でも合間のトークで、「映画監督の我が儘」にはちょっと笑ったw 「ボレロっぽい曲」を注文するなら本物のボレロ使えば良いのに。本当にラヴェルの財団から訴えかけられたのかな。
 そして、締めはやはり名曲「戦メリ」。論ずるほど音楽に詳しくないのですが、もう演奏が始まる前から名曲なんですよね。何言ってんだ、と思うかもしれないけど、一度聞くとあのフレーズって忘れられません。あのシンプルで覚えやすい名フレーズ「たたたたん、たた、たたたた、たたたたたん」ってのが何時でも脳内に流れてる。そして前奏が始まったらもうワクワクが止まらない。ああ、今からあの名曲をやるんだ。「教授」みずから、あのフレーズを弾くんだって待ちかねて、遂に待ちに待った名フレーズ「たたたたたん……」、つまり聴く前から既に始まる、それが「戦メリ」の素晴らしさだと私が思うわけです。「教授」よ、永遠なれ。

猿田猿太郎