「鉄道愛」新幹線大爆破 tabletapさんの映画レビュー(感想・評価)
鉄道愛
本作を視聴する上で、鉄道、特に保安装置、車両に対しての情熱は欠かせない。この情熱を理解できない場合、ひどく退屈な映画に感じるだろう。
リメイクではなく、物語として時系列的繋がりがある完全な続編だ
オリジナルで語られた新幹線の理念は受話器のテプラに「まず止める」という記載があったり、ごくごく自然な会話の中で説明されており、冗長な説明パートはほぼ無い。
感心するのは様々な方法で救出を試みる際に、都度プラモデル、Nゲージで説明するシーンで、『BTTF』のような分かりやすさとともに、あのような製品が世の中にはあって、鉄道ファンはそこにも情熱を注いでいる、ということが端的に表れている。
主要登場人物がキャラ立ちしていて、多人数の中に埋もれないようになっているのも良い
オリジナルでは、鉄道設備を使用した派手なシーンは控えめで、爆破シーンは想像の中のみとなっていたが(本作で爆破せずに救出された109号事件の様子が差し込まれているのでネタバレではない)
本作ではありとあらゆるアイディアが詰め込まれ、しっかり爆破もする。作品コンセプトを守ったエンターテイメント作品として満足度の高いものになっている。
このコンセプトを理解し、そこに全力投球する姿勢が、映画としてクオリティが高いと感じる。
また、オリジナルでは学生運動的な時事を盛り込んだ内容であったが、本作でもSNSや毒親といったキャッチーな内容を取り込みつつ、社会への反発を描いており、精神的な続編として正しく描いている。それもあまり冗長にならない程度だ。
無理な設定にも説明があり、視聴時に隙がない。
以下印象的なシーン
オリジナルにはない空撮シーンの多用は最高
指差喚呼があらゆるシーンで印象的に使われていて、良い
ちゃんとATC開放がされたか、息を呑んで列車位置表示を見つめるシーンは、とてもよい
オリジナルでもあったニアミスシーンは、若干ぶつかり、傷ついた車両が痛々しく、作品の画面に緊迫感をあたえる良い演出
オリジナルの速度同期しての機材渡しシーンでALFA-Xが登場
配線盤を開けての改造、活線での作業、マークチューブでの番号指定、遠隔指示
救出列車
草彅剛の車掌役がハマり役すぎてすごい
東海道新幹線、東北新幹線直通工事はすばらしいアイディア
トラブル、救出されない絶望、怪我人の発生、犯人の自白、爆弾の解除方法、と怒涛の展開かつ物語的に絶望感を漂わせ、
そこからの複線ドリフトへの展開はまさかの展開で拍手喝采だ
仲間への帰還
総じて映画としてのクオリティが高く、続編としてオリジナルに敬意をもち、随所にアイディアが光る傑作。
監督は究極の撮り鉄だ。