劇場公開日 2003年6月21日

CANDY : 特集

2003年6月18日更新

映画ファンならタイトルは知ってる“エッチの国のアリス”、あの「CANDY」が、70年の日本初公開以来、何と30年振りに公開に。しかも、初公開時より約10分長いオリジナル・バージョンで登場だ。周辺情報はなにも知らなくても60年代テイストに大笑いできる楽しい124分だが、実はこの原作小説を書いたテリー・サザーンは映画ファンなら要チェックなお方。彼をご存知じゃないなら、ちょいとチェックしてみては?

60年代の重要人物、テリー・サザーンとは?

The Young Persons' Guide to TERRY SOUTHERN

編集部

原作小説を書いたテリー・サザーンは、60年代のカウンター・カルチャーの重要人物のひとり。95年に死去したが、その作品は今も魅力を失わない。1924年、米テキサス州の小さな町で生まれ、軍隊に従軍後、シカゴ大、ノース・ウェスタン大、仏ソルボンヌ大へ。それ以後は、時代の激震地にちゃんといる。50年代半ばのパリ、60年代のスウィンギング・ロンドン、そしてグリニッジ・ビレッジを経て、ニュー・アメリカン・シネマのハリウッドへ。その交流は、ビート・ジェネレーションのバロウズらから、ビートルズやストーンズまで含むものだ(→時代編)。

「CANDY」
「CANDY」

その作品の魅力は、時代のビビッドな反映と、痛烈な風刺精神、そして爆笑のセンス。ブラック・コメディ、バチあたりジョークの人なのだ。最初は雑誌で執筆、「パリ・レビュー」「エスクワイア」「プレイボーイ」などで小説、ルポ、書評などを書く。小説「キャンディ」は、ウィリアム・バロウズの「裸のランチ」を出版したパリの前衛文学で知られる出版社、オランピア・プレスから58年に登場、その大好評に目をつけた米大手出版社パトナムから64年に全米でも出版され、100万部を超える大ベストセラーになった。

以後、小説も「怪船マジック・クリスチャン号」「ブルー・ムーヴィー」「テキサス・サマー」などがあるが、現在では彼が書いた小説より、参加映画のほうが知名度が高い。彼が脚本に参加した映画には、4本も映画史上に残るカルト作があるのだ(→映画編)。これ以外にもノーマン・ジュイソン監督、スティーブ・マックイーン出演の「シンシナティ・キッド」、英国の風刺作家イブリン・ウォー原作の「ラブド・ワン」の脚本などにも参加、また81~82年には「サタデー・ナイト・ライブ」の脚本も執筆している。映画ファンならチェックしないではいられない重要人物なのだ。

※マークのあるDVDはamazon.co.jpを通じてご購入可能です

<時代編>

■スウィンギング・ロンドン

【ビートルズ】

「バーバレラ」
「バーバレラ」

「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」のジャケットに登場。エドガー・アラン・ポーの隣のサングラスをかけている人物が彼。リンゴ・スターは「キャンディ」に出演、その後、「マジック・クリスチャン」でも大活躍。また、ビートルズの映画「イエロー・サブマリン」に登場する悪役キャラ、ブルー・ミーニーは「博士の異常な愛情」のストレンジラブ博士が元ネタだと言われている。

【ローリング・ストーンズ】

画像3

60年代の彼らをマイケル・クーパーが撮った写真集「ローリング・ストーンズ・イン・アーリー・デイズ」で写真に寄せた文章を執筆。当時のキース・リチャーズの恋人、「CANDY」にも出演しているアニタ・パレンバーグは「バーバレラ」に出演。当時のミック・ジャガーの恋人マリアンヌ・フェイスフルはサザーンが自作を朗読したレコード「Give me your Hump!」に参加している。

出版社:中央アート出版社

■アフター・ビートニク

「博士の異常な愛情」
「博士の異常な愛情」

サザーンはビートニク運動には参加しなかったが、交流はあった。68年にシカゴで開催されたベトナム戦争反対集会に、バロウズ、アレン・ギンズバーグなとのビートニク詩人たちやジャン・ジュネらと共に参加、ギンズバーグはサザーンのレコードにも参加している。「裸のランチ」「ソフト・マシーン」などで知られるビート・ジェネレーションを代表する作家ウィリアム・バロウズは、サザーンの67年の短編集「レッド・ダート・マリファナ」を「僕が読んだ中で最もファニーな小説のひとつ」と賞賛。ちなみに「裸のランチ」はクローネンバーグが映画化。当時を描くチャック・ワークマンのドキュメンタリー映画「ビートニク」にはサザーンも登場。

■ニュー・ジャーナリズム

「クール・クールLSD交感テスト」などを書いたトム・ウルフは、客観性よりも、素材の個性を尊重した主観的ジャーナリズム=ニュー・ジャーナリズムを提唱し、テリー・サザーンのルポをその元祖とした。ちなみにこの時代にはこれをもう一歩進めた体験主義のジャーナリズム=ゴンゾー・ジャーナリズムも登場。これを提唱したハンター・S・トンプソンは、テリー・ギリアム監督の「ラスベガスをやっつけろ」の原作となったルポ小説を書いた。

<映画編>

「イージー・ライダー」
「イージー・ライダー」
画像6
画像7

「博士の異常な愛情/または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか」(64)

スタンリー・キューブリック監督のブラック・コメディ映画の名作。精神に異常を来した米軍司令官がソ連への核爆撃を指示、米国大統領や英国官僚たちが事態の収拾を図るが……。ピーター・セラーズがマッド・サイエンティスト、米国大統領、英国大佐の三役を怪演。

「バーバレラ」(67)

フランス製SFコミックをロジェ・バディム監督が映画化。キッチュなデザイン、おバカでエッチなストーリーのカルトSF。4万年後の未来、ジェーン・フォンダ演じる捜査官バーバレラが宇宙で大冒険。「CQ」のローマン・コッポラ監督など今も熱狂的ファン多数。

「イージー・ライダー」(69)

デニス・ホッパー監督・出演、ピーター・フォンダ出演。ドラッグ、バイカー、ロックなどのサブカルチャーを映画に盛り込み、アメリカの現代社会を痛烈に風刺して若い世代の圧倒的な支持を受けた、アメリカン・ニューシネマの代表作。

「マジック・クリスチャン」(69)

パロディ快作「007/カジノ・ロワイヤル」(67)のジョセフ・マクグラスが監督、ピーター・セラーズとビートルズのリンゴ・スターが大富豪とその養子になった文無し青年に扮し、英国の権威を粉砕する珍道中を展開。「モンティ・パイソン」のジョン・クリーズとグレアム・チャップマン、ロマン・ポランスキー監督らも出演。

関連ニュース

関連ニュースをもっと読む
「CANDY」の作品トップへ