劇場公開日 2025年7月4日

「目立たぬように、はしゃがぬように」「桐島です」 La Stradaさんの映画レビュー(感想・評価)

目立たぬように、はしゃがぬように

2025年8月5日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 東アジア反日武装戦線のメンバーとして指名手配を受けながら50年近く逃走を続け、昨年病院で亡くなる直前に本名を名乗り出た桐島聡氏を巡る物語です。同じテーマを扱い、今年3月に公開された足立正生監督の「逃走」と対を為す作品と言ってよいでしょうか。

 劇中何度も歌われる河島英五さんの歌でお馴染みの「時代おくれ」の歌詞「目立たぬように、はしゃがぬように」こそ彼の望みだったんじゃなかったのかな。それは単に警察から逃れる為にでなく、本当にそんな風に生きたかったんだと思えました。一方で、これも本作で描かれる様に、安部晋三のスピーチに怒り、いつまでも変わらない外国人ヘイトに苛立ちを募らせていたのではなかったでしょうか。それもこれも誰にも分らぬ事であり、想像するしかないのですが。

 「逃走」をも「闘争」と読み解く足立正生監督作(これはこれで足立監督らしくて良いのですが)より僕には人間の姿がはっきり見えました。「人の一生って何なんだろうね」と帰り道に考えてしまったと言う事は本作に力があったと言う事です。

La Strada