劇場公開日 2025年8月29日

「ユニークな世界観、光るユーモアのセンス、心暖まるテーマ…… でも それほど面白くもない不可思議な映画」ユニバーサル・ランゲージ Freddie3vさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0 ユニークな世界観、光るユーモアのセンス、心暖まるテーマ…… でも それほど面白くもない不可思議な映画

2025年9月8日
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鑑賞方法:映画館

カナダ マニトバ州の州都ウィニペグ市は人口約80万、約130kmほど南下するとアメリカ合衆国との国境にぶち当たります。マニトバ州が境を接している米国側の州はミネソタ州とノースダコタ州、東から大ざっぱに東部、中部、西部と分けるとウィニペグはカナダ中部の中心都市という感じです。ですが、この映画のウィニペグはファンタジーの中にいて、もしもの世界のウィニペグです。ここでは公用語がペルシャ語とフランス語になっていて、ほとんどの住民はペルシャ語ネイティブみたいで、物語はペルシャ語での会話を中心として、ときにフランス語が混じるといった感じで進んでゆきます。

日本映画で同様の企画があって、もしもの世界で日常会話が例えばポルトガル語で行なわれてる街を作るとしたら、場所はどこにするでしょうか。私は北海道のいくつかの街を思い浮かべてみましたが、結局、日本では難しいかもしれないな、と断念しました。同様にアジア、ヨーロッパでも難しそうです。比較的若い国で移民を受け入れてきた歴史があり、文化の多様化にも寛容である…… そういった意味で、この映画はカナダならではのお話なのかもしれません。カナダ国内にはまわりは全部 英語を話しているのに頑なにフランス語にこだわり、ときには独立に関する住民投票を実施したりもするケベック州という存在もあり、言語に対する意識もそれなりに高いでしょうし。

さて、この作品、上記の設定の件も含めてかなりユニークな世界観を持っています。絵作りに関しても、ロングショットを多用し、街の建物の幾何学的な美しさを際立たせる、ベージュを基調とした色使いでパステル調といったあたりの特徴を持ち、画面の美しさには徹底的にこだわっている感じがします。ツアーガイドが街に来た観光客にもはや廃墟とも呼べるような 閑古鳥が鳴いてる感じのショッピングモールを見せて回るというユーモアのセンスもなかなかのものです。また、タイトルにあるユニバーサル•ランゲージというのが、まあ、そういうことなんだろうな、というところに落ち着くストーリー•ラインも悪くない……

ということで、ユニークな世界観やユーモアのセンス、心暖まるテーマのもとで展開するストーリー•ラインといい映画の要素が揃っているような感じなのですが、実はそれほど楽しめませんでした。ユニークな世界観が諸刃の剣でなじめないうちに物語が終わってしまったという感じでしょうか。

ラストシーンの彼はいわゆる「恩送り」をしてたんでしょうかねぇ……

Freddie3v