「映画としてはつまらないけど」ミッション:インポッシブル ファイナル・レコニング TOMOAKIさんの映画レビュー(感想・評価)
映画としてはつまらないけど
「世界を崩壊に導くAI」──この現代的テーマに、ミッション:インポッシブルが挑んだ最新作。しかし、残念ながらその挑戦は多くの観客にとって“ミッション・アンコンプリート”に終わったのではないだろうか。
本作の最大の課題は、世界観が終始「しっくりこない」点にある。敵は“エンティティ”と呼ばれる人工知能。だがその実態や脅威の本質が最後まで曖昧で、ストーリー全体の意味を深く理解することができない。かつて『マトリックス』が見せたようなAIに支配されたリアリティや説得力と比べると、その不透明さは致命的だった。観客は「何と戦っているのか」を理解できず、物語の重みも共感も感じられないまま、スクリーンの情報をただ受け流すしかない。
また、過去作へのフラッシュバックも頻出するが、本作がシリーズ初見の観客にとってはほとんど意味を成さない。ただでさえ複雑な構造に拍車をかけ、物語の流れは混迷を極める。極地ロケや国家規模の危機を盛り込んだスケール感は「より壮大に」「より豪華に」という製作陣の使命感の表れなのかもしれないが、それが逆に作品の骨格を曖昧にし、荒唐無稽さだけが際立ってしまった印象だ。
クライマックスでのプロペラ機ドッグファイトも、長尺すぎて緊張感よりも眠気が勝ってしまった。トム・クルーズの渾身のアクションには確かに敬意を表したいが、編集の冗長さは否めず、「これは本当に必要な尺だったのか?」という疑問が残る。2時間程度にバッサリと編集していれば、テンポ感ある冒険活劇としてもっと魅力的だったかもしれない。
結局のところ、この物語の中で自分の魂が共鳴した瞬間があったかと問われれば──「まったく、なかった」と言わざるを得ない。
ただし、一点だけ確実に心を動かされたのは、トム・クルーズという男の存在そのものだ。60歳を超えても、誰よりも体を張り、限界に挑む姿は、年齢近しい世代にとっては紛れもない“勇気の象徴”である。映画としての評価は低くとも、「彼の挑戦」を目撃する価値は確かにあった。
そういった意味で、本作の点数は「映画の完成度:1点」「トム・クルーズの生き様:5点」、その平均をとって総合2.5点としたい。
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