「イーサン・ハント/ノー・タイム・トゥ・ダイ。 トムちゃんはアクションをやめへんでーー!!!」ミッション:インポッシブル ファイナル・レコニング たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
イーサン・ハント/ノー・タイム・トゥ・ダイ。 トムちゃんはアクションをやめへんでーー!!!
IMFエージェント、イーサン・ハントの活躍を描くスパイアクション映画『ミッション:インポッシブル』シリーズの第8作。
前作から2ヶ月、世界は暴走したAI“エンティティ“により分断と混乱に満ちたものになってしまっていた。エンティティを制御する鍵を手に入れたイーサンは、それを消滅させる為に仲間たちと共に宿敵ガブリエルの行方を追うのだが、隙を突かれた彼とグレースは逆にガブリエルに捕えられてしまう…。
監督/脚本…クリストファー・マッカリー。
○キャスト
イーサン・ハント…トム・クルーズ(兼製作)。
ベンジー・ダン…サイモン・ペッグ。
ホワイト・ウィドウ…ヴァネッサ・カービー(アーカイブ出演)。
グレース…ヘイリー・アトウェル。
1996年から続いてきた『M:I』シリーズも遂にファイナル。トム・クルーズさん、お疲れ様でした〜🎉
思えばシリーズ1作目から約30年。同じ俳優が主人公を演じ続けたシリーズでここまで長く続いたものは、これ以外には『男はつらいよ』(1969〜2019、渥美清が主人公を務めたのは実質1995年まで)くらいしかないんじゃないでしょうか。これからはトム・クルーズの事を“USの寅次郎“と呼ぶでっ!
全作鑑賞済みとは言え、正直言って『M:I』シリーズの事は殆ど覚えていない。どれがどれやら、マジで全部ごっちゃ混ぜになってしまっている。直接の前編である『デッドレコニング』(2023)についても、もの凄いふわっふわした記憶のまま本作に挑みました。
予習無しで大丈夫かっ!?と少々心配していましたが、結論から言えば全く問題無し。『1』から今に至るまでの総決算的な内容なのですが、「お前はあの時の○○!」や「実はあの時の○○は…」など、これまでの登場人物や出来事とリンクする様な時には過去のアーカイブ映像が流れるという親切設計で、自分の様なライト層でも安心して観ていられる。
そもそも、作中でセルフツッコミが入っていたように、『M:I』シリーズの基本構造は「仲間の命を人質に取られたイーサンがなんやかんやで世界を救う」というパターンで統一されており、ぶっちゃけストーリーとか有って無い様なもの。トムの「俺のやりたいスタントベスト10」を描くための装置としてこのシリーズは機能しており、それはこの最終作でも何ら変わっていない…どころか、それがちょっとどうかしちゃってるレベルにまで先鋭化されてしまっている。
“トム・クルーズとは一体何者なのか“。
全ての映画ファンが、この問いに頭を悩ませてきた事だろう。キャリアの初期はヤングアダルト・スター、いわゆる「ブラット・パック」の1人としてみなされてきたが、『レインマン』(1988)や『7月4日に生まれて』(1989)で演技派としての地位を確立。その後、『ミッション:インポッシブル』シリーズが始まると共に徐々にアクションスターへとシフトしてゆき、シリーズ4作目『ゴースト・プロトコル』(2011)辺りで完全に今のトムの雛形が完成。その後は「アクションバカ一代」として映画界の果てしなく遠い男坂を1人爆走している。
過激なスタントを生身で熟す、という近年の傾向から“USのジャッキー・チェン“とも称されて(揶揄されて?)きたトム。
自分も「トムはジャッキーに憧れているのだろう」などと思っていたのだが、今作を観てしまったからにはその認識を改めなくてはならない。
この映画でのトムの振る舞いを見てもらいたい。やたらとパンツ一丁になり、裸一貫で北極海にダイブ。空中では飛行機にしがみつきながら、猛風で変顔。なんやかんやあって最後にはスカイダイビング。これはもう映画スターというより、リアクション芸人の領域ではないのか?
そう、何を隠そうトム・クルーズはジャッキー・チェンではなく、“USのダチョウ倶楽部“を目指していたのだ!!
親日家のトムの事、きっと日本のバラエティ番組「ビートたけしのお笑いウルトラクイズ‼︎」(1989-1996)を観ていたのだろう。そこで芸人たちがロケバスごと海に沈められたりロケットランチャーで爆撃されたりスカイダイビングされられたりする姿を見て「This is it ‼︎」と叫んだに違いない。
「俺もこの番組に出ているダチョウ倶楽部さんみたいになりたい…」。そう思ったトムは研鑽を重ね、遂には裸芸に氷風呂、そして変顔までも習得。上島竜兵亡き今、その後任者として名乗りをあげる。
リアクション芸を手にしたトム、今後はお茶の間で「Monsieur Muramura」や「Kiite naiyo〜」と言った往年のギャグを披露してくれる事だろう。きっとそうに違いないんだ…。
…一体俺は何の話をしているんだ…?
何が言いたいのかと言うと、とにかく今回のスタントは凄いッ!あまりにも凄すぎて殆どコメディ映画…というかギャグ漫画の世界に足を突っ込んでしまっている。
格闘漫画「刃牙」の作者、板垣恵介はインタビューで「『こんなの笑うしかないだろ!?』というのを表現したい」と述べていたが、トム・クルーズもまたマジなのかギャグなのかわからないという「シリアスな笑い」を体現した存在へと昇華してしまった。
笑わそうとしているのかしていないのか、それすらハッキリとはわからないところに彼の得体の知れなさを感じずにはいられない。
はっきり言って、本作の旨みは中盤の潜水艦パートとクライマックスの空中パート、この2つのスーパースタントのみ。そのために169分というクソ長いランタイムが費やされており、冷静に考えると「ふざけんなっ!!」と一喝したくもなるのだが、観ている間は全く退屈しないのが不思議。中身がスカスカなのは認めざるを得ないが、だからこそ味わう事が出来るゴージャスでリッチな映画体験もあるのだと、この映画は教えてくれる。
「IMFには他にエージェントがいないのか…?」とか「作戦の意味がサッパリわからんのですが…」とか「水圧舐めんなっ!」とか、ツッコミどころは死ぬほどある訳だが、そういう雑念は一旦脇に置いておいて、トム様の命懸けのスタントに胸を踊らせたい。
コロナ禍やハリウッドストライキの影響を受け、完成が伸びに伸びてしまった本作。そのせいもあり、製作費が4億ドルというちょっと考えられない数字になってしまった。これをペイするためには興行収入10億ドル以上出さないといけないんだって。…そんなもん無理に決まってるだろっ!!いい加減にしろっ!!
ただ、公開が遅れてしまったのはなにも悪い事ばかりではない。フェイクニュースと陰謀論によりインターネットをカルト化し、猜疑心により人々を分断させるというエンティティのやり口は、たった今我々が直面している世界的な問題の合わせ鏡となっている。当初は2022年に公開する予定だったというが、もし予定通りに事が進んでいたら、本作の内容はただのSFとして一笑に付されていたかも知れない。公開が遅れたからこそ、この物語の風刺性はより鋭さを増したと言えるだろう。
だからこそ、エンティティの扱いの雑さには正直ガッカリ。タイムリミット以上の役割を果たしていないじゃないか…😮💨
ぼんやりとしか描かれていないが、どうやらエンティティを信奉するQアノンの様なカルト信者が世界中にいるらしい。じゃあ今回の敵はどう考えてもそいつらにすべきだっただろう。そうすれば今回の名言「お前はSNSの見過ぎなんだよっ!」がもっと活きたものになったはず。
また、激ヤバAIだというエンティティが全くそのヤバさを発揮していない点もよろしくない。意思を持ったAIだからこその嫌らしさ、例えば悪意のあるウソや陰謀論で世界を掻き乱し、各国の代表が自らの手で核のスイッチを押す様に仕向けるとか、そういうものを描いて欲しかった。
もう一点苦言を呈するなら、チームのメンバーが微妙すぎる。ルーサーが早々に退場してしまった事もあり、見知った人はベンジーだけ。後はほぼ全員が前作で初登場した新メンバーじゃん!ダンローなんてレアキャラを今更引っ張り出す必要あった!?
元々『M:I』シリーズはメンバーの入れ替わりが激しいのでこれがデフォルトといえばそうなのだが、最終決戦くらいはバチッとしたオールスターキャストを見たかった。メンバー間のケミストリーという意味では、やはりシリーズが進むごとに敵すらも味方に取り込んでどんどんファミリーが増殖してゆく『ワイルド・スピード』シリーズ(2001-)の方に軍配が上がるか。
結局、『ローグ・ネイション』(2015)のハント/ブラント/ベンジー/イルサ/ルーサーの5人体制がベストだった。ジェレミー・レナーとレベッカ・ファーガソンがシリーズに復帰してくれれば、今回の盛り上がりも5割増しくらいにはなっていただろうけど、まぁ色々と難しいんだろうね。
何処に評価軸を置くかで賛否が分かれそうな本作。ウェルメイドなスパイ物語を期待している人にとってはダボハゼみたいな映画だろうが、「トム・クルーズによるビックリスタント見本市」を求めている人にとっては十分に満足がゆく出来栄えなのではないでしょうか。
『M:I』シリーズも完結したし、これでトム・クルーズもアクションスターからは引退…しそうにないなこれは。
「トムちゃんは100歳になってもアクションをやめへんでー!!!」と、インタビューで高らかに宣言したトム。『トップ・ガン3』や『デイズ・オブ・サンダー2』、更には宇宙ステーションで映画を撮るという野望まであるという事だが、トムには“USの寅さん“、そして“USのダチョウ倶楽部“として、渥美清や上島竜兵の分まで精一杯活躍して頂きたい。陰ながら応援してますっ!!
※『デッド・レコニング』では『カリオストロの城』(1979)を髣髴とさせるフィアットでのカーチェイスが描かれていた。マッカリー監督はインタビューで「『ルパン』なんて知らん」とキッパリ言い切り、その影響下にはない事をアピールしていたが、今回の水中スタントもちょっと『カリ城』っぽかった様な…。複葉機でのチェイスシーンは『紅の豚』(1992)っぽかった様な…。飛行機のカラーリングとか風圧で顔がベロベロになるとことかそのまんま。
今回、映画のプロモーションで25回目の来日を果たしたトム。その合間にマッカリー監督と共に「ジブリ美術館」を訪れた事が明かされた。
…トム&マッカリー!きさま!(やっぱりジブリを)見ているなッ!
※※『M:I』シリーズ超私的ランキング!
🥇『フォールアウト』(ヘンリー・カヴィルも頑張りました)
🥈『ファイナル・レコニング』(評価が高すぎる気もするが、餞別の意を込めて)
🥉『ローグ・ネイション』(飛行機はへばりつくもの)
④『ゴースト・プロトコル』(高層ビルの清掃員さんは凄い)
⑤『デッド・レコニング』(戸田奈津子よ、固有名詞の「それ」なのか代名詞の「それ」なのか分かりづらいぞ)
⑥『3』(悪役はこれが1番)
⑦『1』(当時SNSがあったら大炎上していた事だろう)
⑧『2』(ハト!ロン毛!クライミング!)
怒涛のトム様愛が感じられて楽しく読ませていただきました!
トップガンの時は戦闘機の鎧をまとっての飛行でしたが、今回は生身の体をなげだしてる!アクロバットだわ!トム様大丈夫!?とハラハラしっぱなし、ドーパミン出まくりました。ファイナルと出ていたけど、復活、リターンズあると良いですね。
こんにちは!私もシリーズ全作ごっちゃ混ぜで、感想は面白かったとしか言えないので、同じで嬉しかったです。
氷の海の水温と水圧、舐めてる!と同じ場所で突っ込みました。
それもご愛嬌で、3時間楽しくあっという間でしたね。
たなかなかなかさま、初めまして。
「トムちゃんはアクション。やめへんでーー!!!」、楽しく読ませていただきました🤭
トムはアカデミー賞の新設スタント部門を受賞するまでは、何かやらかしてくれるはず、と思ってます🥳
シリーズ超私的ランキング、ファイナルはまだ何位か決められませんが、ほかは全て一緒です🥰
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