「シリーズ集大成、というより総決算。……だが」ミッション:インポッシブル ファイナル・レコニング くめいさんの映画レビュー(感想・評価)
シリーズ集大成、というより総決算。……だが
言わずと知れたトム・クルーズ主演の人気スパイ・アクション。その(おそらく)最終幕となる今作。まず全体的な印象を言えば完成度は高い。アクションをはじめとした見どころもしっかりしているし、テーマ、ストーリーテリングも良い。過去作の伏線やキャラを踏襲しつつも回想は短くまとめて入れ、『こんなことがあったんだ』程度で受け入れられれば過去作を観ていなくてもそこまで気にならないと思う(私はうろ覚えくらい)。そういったサブキャラの立ち位置や価値観の差異をさりげなく入れているのも好印象。
ただし……が付くのがこの作品。観る人の期待していることなどによっては肩透かしかも。
では以下、ネタバレ込みで細かい所感を。
まずシナリオの概要を書くと、
暴走AIによってあらゆるネットワークが掌握され、その上AIは各国の核施設を掌握し、全ての核を入手したら世界中に放って人類を滅ぼすらしい。そのAIはかつてイーサンが盗み出したもので、ソースコードを入手して倒せるのもイーサンだけ。責任とってよ!
というもの。
このストーリー自体はAIが隆盛を迎えている現代にマッチしていて良いと思う。疑心暗鬼に陥った世界の中で人と人の絆を繋いでAIを超えるという展開もアツいし、チームという設定も活きる。
でもそのためにやっていることは「エンティティはこう考えていないはずだから裏をかけば混乱する」という所謂『逆張り』だし(しかもそれがどう影響するかには言及しない)、それがバレるのを恐れてメインキャラ以外には『話せないけど信じてくれ』を繰り返す。そこは少し単調に感じた。
アクションは既に指摘されているけど『やりたいからやっている』感はある。例えば飛行機から海に飛び込むシーン。
「我々が助けなかったらどうするつもりだった?」
「それは考えてなかった」
は絶対的な信頼or自信があるみたいで格好いいけど、なんの前振りもないので実際考えなしにも見える。じゃあなんで5分って言った?
北極海の深海150メートルからパンツ一丁で浮上して『ちょっと死んだけど大丈夫』はさすがにリアリティが無いし、リアリティが無いアクションはスパイ映画ではなくヒーロー映画でするべきだと思う。
ラストの飛行機にぶら下がるシーンも、すごい。あれをスタントもグリーンバックもなしで実際に飛ぶのは思いついてもやらないし、やってはいけない(誉め言葉)。
でも長い。さすがに長く、ガブリエルがそのあおりを食ったのではないかと思うくらいに長い。(一応言っておくとパラシュートは一座席に一つあるものだし、紐が絡んだりしたとき用に予備が一緒に入っているものである)
観ていて感じたのは『トム・クルーズ版ワイルド・スピードかな?』って感じ。やりたいことをやるために映画を撮るのは否定しないし(Q・タランティーノみたいな人もいるし)、某カーアクションの本家みたいな独りよがりの作品になるよりはマシ。
この映画にスパイ感は無くても、そもそもこの作品が前作の『Part2』であることを鑑みれば前半で潜入、騙し合いをし、後半で決着のためのアクションをする、というテンプレに則った構成といえなくない。
ストーリー含めアクション映画、シリーズ決算としての完成度は高いので☆4.5としたけれど、これより低い評価もぜんぜんあると思う。
最後に、『それ』問題は単に字数の問題だと思うので訳者の問題にはしない。過去の名訳だって字数制限から生まれている。
「Here's looking at you, kid」
の直訳は
「君を見ていることに乾杯、かわいいこちゃん」
だが、数秒で読める字数にしなくてはならないから字幕では
「君の瞳に乾杯」
になったというのは有名な話(『カサブランカ』)。
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