「影に生き死のうとも、そうではない道を選ぼうとも。我々もイーサンも今ここにいるのは、選択の結果」ミッション:インポッシブル ファイナル・レコニング 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
影に生き死のうとも、そうではない道を選ぼうとも。我々もイーサンも今ここにいるのは、選択の結果
シリーズ初の2部作構成となった前作『デッドレコニング』。
2年連続でミッションが見れる!…と楽しみにしていたのだが、前作が思いの外成績が伸びず。
脚本家組合のストや撮影トラブルで遅れが生じ、結局一年延期。
サブタイトルも『デッドレコニング PART TWO』から『ファイナル・レコニング』に改題され、仕切り直し。
続きを押し出すのではなく、今回は今回のミッションで新たに宣伝してるようだが、話的には前作の続き。
世界を思うがままにする事が出来るAIシステム“エンティティ”。
それを司る2本の鍵を巡って、イーサンたち、因縁ある過去の敵、武器商人、IMFや各国が入り乱れた争奪攻防戦。
ラストでイーサンが鍵を手にした所で終幕。
世界の命運は…?
イーサンは“エンティティ”を葬る事が出来るのか…?
タイトルの“ファイナル”とは…?
たかだか一年の延期だが、本当に待っていた。
本公開は5月23日。日米同時公開。日本では17日~22日に先行上映され、なら17日公開でええやん!…などと突っ込まれているが、アメリカより早く見れる特別感。素直に嬉しいじゃないか!
“エンティティ”による脅威は現実のものになろうとしていた。
核を所有する各国のシステムに侵入。一つ一つ掌握していく。
もし、“エンティティ”が世界中の核を掌握したら、直ちに世界や人類への攻撃が始まる…。
イーサンはガブリエルを追っていた。ベンジー、IMFエージェントとなったグレースと合流。
新たに二人を仲間に。前作でイーサンを執拗に追っていたブリッグスの部下のドガと、前作で何度もイーサンたちの前に立ち塞がるも、ガブリエルに裏切られたパリス。しつこい敵だったパリスが味方になっての頼もしさと、ポム・クレメンティエフのキレのあるアクションと美しさ。
鍵はイーサンたちが手に入れたが、それで諦めるガブリエルではなかった。
“エンティティ”を支配下に置く。その為にあるものを手に入れようとする。
“エンティティ”に効果あるデジタル毒薬。それは病身のルーサーが作ったものだった。
ルーサーにガブリエルの魔の手が迫る。
イーサンは助けに向かうが…。
2本の鍵の用途も判明した。
前作の開幕で沈没したロシアの原潜。“エンティティ”が襲撃した理由…。
潜水艦の中に、“エンティティ”を無効化させる事が出来るディスク“ポトコヴァ”がある。2本の鍵はそれを開け、取り出す事が出来る。
まずは“ポトコヴァ”を手に入れる為に、北海へ。
が、さすがにイーサンたちだけで何とかなる事態ではない。
イーサンはわざと捕まり、大統領に掛け合う。『~フォールアウト』でCIA長官だったエリカが大統領に。
数々の命令無視。問題行動。上層部はイーサンを捕らえようとする。
大統領も詳細を話そうとしないイーサンに怪訝。
イーサンは「僕を信じて下さい。今が選択する時」とだけ。
大統領はイーサンを捕らえるよう命じるが、実は側近たちにそう見せ掛け、イーサンに全てを託した。大統領権限で一個艦隊の協力を。
“ワカンダの女王”も務めたアンジェラ・バセットの英断。彼女の英断はラストにも。核を保有する各国のトップよ、こうあれ。
北海へ。
が、原潜の正確な沈没位置は分からない。
二手に分かれ、イーサンは米原潜の協力を得て、付近で待機。極寒の海の中で。
原潜が沈没した時、音を発した。そこから位置を特定する。
ベンジーたちは発した音を捉えた施設へ。そこにいたのはまさかまさかの意外過ぎる人物…!
ベンジーたちに敵襲。が、何とか位置を特定し、発信。
イーサンは原潜内へ。“ポトコヴァ”を手に入れたが、原潜が海溝へ落下し始め…。
前半ミッションだけで並みのアクション一本分。
ミッションはこれで終わりじゃない。必要なものを手に入れただけ。寧ろ、ここから。
もし“エンティティ”が核で世界を炎に包んだ時、被害を被らないよう身を隠す。
その場所とは、南アフリカにあるオフラインサーバー“終末の保管庫”。
つまりその時だけ、“エンティティ”の居場所が分かる。
保管庫にやって来た“エンティティ”をあるドライブの中に閉じ込める。
“エンティティ”を混乱させる事が出来るのが、“ポトコヴァ”とルーサーの“毒薬”。その二つを組み合わせた時。
つまり今回のミッションというのは…
“エンティティ”による核攻撃が避けられなくなったその寸前。保管庫にやって来た“エンティティ”を、“ポトコヴァ”ד毒薬”で混乱させ、無効化させるドライブの中に閉じ込める。
それらのタイミングはほぼ同時でなければならない。僅か0.1秒…!
勿論ガブリエルの魔の手も迫る。
“エンティティ”を手中にしたい組織や機関の思惑。
イーサンに託したものの、万一に備えて、大統領はやられる前に核ミサイルを発射体勢。世界の複数の国とアメリカの一都市が犠牲に…。
シリーズ最大最難関のミッションに偽りはない。世界の危機もこれまでの比ではない。
だが、我々は信じている。イーサン・ハントという男を…。
前作のラストから直結。多少の説明(“エンティティ”というAIシステムが世界を滅ぼそうとしている設定)はあるが、やはり前作『デッドレコニング』のお復習は必須。
開幕からノンストップ&フルスロットル!…という感じではない。
序盤は各々の動向や思惑をじっくりと。シリーズ一番のシリアスムードが漂う。
緊迫感は終始。アクションを小刻みしつつ、アクションが大きく動くのは中盤になってから。
極寒の海底に沈んだ原潜内で…。前作開幕で原潜が沈んだ時から、この場所が舞台になるだろうと思っていた。
期待に違わぬスリルと息が詰まりそうなシークエンス。
トムも極寒の海の中でほぼ裸状態になって…。ヒェ~!
トム×水中アクションと言うと、『~ローグ・ネイション』での6分以上の息止め。イーサンが一瞬死んだあの時の危機が嫌でもまた起こりそう…。
最大の見せ場アクションは、あらゆる宣伝で推している上空を飛ぶセスナ機にしがみついての空中アクション。
命綱は一本だけ。言うまでもなく、トムのガチアクション。
このシリーズのいつもの宣伝なのだが、一番の見せ場を予告編などで見せてしまう。
本編で初めて見てハラハラしたかった…と思うが、驚きなのは、予告編や宣伝であんなに見せられても、本編で遂にのそのシーンになると、より以上のハラハラエキサイティング!
ホント、よく大事故が起きなかったと思う。いつもながら。
風音が強すぎて、ほぼ台詞ナシなのがリアル。
トム(とガブリエル役のイーサイ・モラレス)の必死の形相。
セスナを追ってセスナで並走。飛び移る。
上下逆さま。足場の無い所で死闘。
最後は操縦不能となったセスナから…。が、パラシュートに火が燃え移り…。
このシーン、ちょっとツッコミ所があるとは言え(ガブリエルがパラシュートは無いぞと言っていたのにあったり、燃焼したパラシュートの代わりにもう一つあったの…? それからガブリエルの呆気ない最期…)、圧巻…。
60を過ぎたトム。そろそろ身体を労って…と思いつつ、もっともっとスゲー!アクションを魅せてくれと、ついつい欲張っちゃう。
それに応え、披露し続けられるのが、トム・クルーズというスーパースターたる所以。
『デッドレコニング』からの続きではなく、シリーズこれまでのリンクネタが堪らん…!
“エンティティ”誕生のきっかけ。かつてイーサンが盗んだもの。まさか『M:i:Ⅲ』の件がここに絡むとは…!
イーサンを執拗に追うブリッグス。本名ではない。本名は…。あのキャラの息子だって!?
最大のサプライズゲストは、第1作目のあの男の29年ぶりの再登場…! 思えば、イーサンが侵入したせいで責任を負わされ、地の果てに左遷。誰もが忘れない不運な彼へ、今回粋な罪滅ぼし。左遷させられたこの地で出会った妻共々チームに加わって好サポート。初めて対面したイーサンへ掛けた言葉にジ~ン…。
嬉しいカムバックもあれば、辛すぎる別れも…。
いつかこの時は来るだろうと思っていた。しかし、やはりその時になると…。
イーサンにとってもシリーズにとってもファンにとってもミッションに於いても、君が居てくれたから。
居てくれる安心感。引き締める存在感。完璧なバックアップ。
最高の仲間であり、欠けがえのない親友。
彼からイーサンへのメッセージ。
イーサンも信念ある男だったが、彼もまた熱い漢だった。
ルーサー、フォーエバー!
イーサンの選択が必ずしも絶対的に間違っていなかった…訳ではない。
結果的に世界の危機を救ったが、その都度その都度世界や周りに危険を招いている。
“エンティティ”誕生もイーサンの起こした結果の一つ。
仲間を守る事に命を懸けるイーサン。が、彼に関わった事で命を落とした仲間も…。
今回もまた。イーサンが選択したミッションは、世界を救う/世界を滅ぼす紙一重。
ほんの一瞬でも、コンマ遅くても、世界は…。
またあの男が世界を窮地に追い込むのか…?
他に方法は無いのか…?
無い。これが、最善。唯一の選択。
一度最悪の状況に落ち、ほんの一瞬のタイミングで世界を救う。
イーサンたちだってこんな絶体絶命のミッションを喜んではやりたくないだろう。
世界を滅ぼすつもりはない。危険に陥れるつもりもない。
これしかないのだ。
最悪からほんの一瞬の最善へ。それに全てを懸ける。
仲間。己の信念。
良くも悪くもこれまでの自分の積み重ね。
その選択で、今自分はここにいる。
自分にしか出来ない事を。ミッションを。選択を。
だからこそ信じる。我々は自分自身を。イーサン・ハントを。
絶賛評続いた昨今と比べると、今回ちと批評は鈍い。
詰め込み過ぎ。複雑の声も。
3時間近い長さはすでに賛否。
そんなの屁でもない。
アクションに度肝を抜き、難関ミッションに手に汗握り、イーサンたちやドラマに感情を寄せ、過去シーンに思いを馳せ、3時間をじっくり堪能。
ハァ、感無量…。
ずっとシリーズを見続けて来て良かった。
ありがとう、ミッション:インポッシブル!
ありがとう、トム・クルーズ!
何だかまるでこれで最後みたいな言い方だが、本当にファイナル・ミッションなのか…?
トム・クルーズ自身は最後とは言ってないし、次のミッションあればまた終結しそうな…?
だがなかなか、シリーズの度にドデカくなり、最大スケールの今回を超えるミッションも難しいだろう。
暫くは世界に平穏が。アクション続いたトム・クルーズも次回作ではオスカー監督アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥの下で人間ドラマを…と思ったら、
まだ詳細は分からないが、自ら引き起こした災害から世界を救おうとする男を演じるらしい。
一難去ってまた一難。この男に平穏は無い。
やはり世界を救う男、トム・クルーズ。世界は君を必要としている。
近大さま
シリーズ全作観ているのですが、記憶が脳内カオス状態になっていたので、ファイナルは“Don't Think, Feel”で観ていました。
近大さんのレビューで、何を読むより、誰に聞くより、作品の理解が深まりました。シリーズ過去作のレビューも読ませていただきました。
ありがとうございました😊
映画チケットがいつでも1,500円!
詳細は遷移先をご確認ください。