劇場公開日 2025年1月24日

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「取り止めもない、でももう一度見たい映画」蝶の渡り bikkeさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5取り止めもない、でももう一度見たい映画

2025年2月28日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

かつて若く自由で貧乏でお祭り騒ぎの日々を暮らしていた芸術家たち。若者の特権と思いきや、30年ほどの時を経てなお半地下の住まいでアートや音楽を糧とし、
金に事欠きながらも楽しく生きているように見える。
それはかつてと変わらないようだが、仲間の一人が
戦争に巻き込まれて亡くなっていたり、
生活のために金持ちと結婚し他国へ渡ったり。

人々の頭上にふわりと浮かんだたくさんの蝶の絵を
見ながら語る「蝶は風を待っている」という言葉は、
戦争に蹂躙されてきたジョージアという国に
生きる人々の気持ちなのだろうか。

若き日からずっと、カメラを通して仲間を見続けてきた
女性ナタの主人公への思いは、友情であり愛のようで
あり、もう少し離れた目線でもあり、
それは監督の祖国への想いなのかもしれないと思った。

ジョージアの歴史を知らないまま観た私にとって、
最初は芸術家たちの暮らしはとりとめもない印象だったが、それでも見ているうちに徐々に輪郭を持ってきた。
「私は撮るべきものは撮った、次はあなたの番よ」と
少年にカメラを手渡すシーンは
監督のささやきのようでとても心に残り、
最後にはもう一度見てみたい1本になった。

bikke