「時系列シャッフルしない方が、夫婦の幸福度の変化がわかりやすかったように思えた」HERE 時を越えて Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
時系列シャッフルしない方が、夫婦の幸福度の変化がわかりやすかったように思えた
2025.4.9 字幕 イオンシネマ高の原
2024年のアメリカ映画(104分、G)
原作はリチャード・マクガイアの小説『HERE』
定点カメラによるある一点で起こった過去を描いたヒューマンドラマ
監督はロバート・ゼメキス
脚本はエリック・ロス
物語の舞台は、アメリカ・フィラデルフィアのとある場所
かつては隕石の直撃を免れ、氷河期を過ごしたその土地は、やがて人類が生活をするようになり、先住民のコミュニティが出来上がっていた
1700年代後半に入り、開拓者のベンジャミン・フランクリン(キース・バートレット)がそこに入植し、周囲の開拓を始めてからいく
それから月日が過ぎた1900年代初頭、フランクリンの邸宅の斜め前に家が建てられることになり、そこに飛行機好きの夫ジョン(グウィリム・リー)とその妻ポーリーン(ミシェル・ドカリー)が住み始めた
だが、ジョンは飛行機への憧れを捨てることができず、家を引き払うことになった
その後、1940年頃に発明家のリー・ベックマン(デヴィッド・フィン)とその妻ステラ(オフィリア・ラヴィボンド)が住むようになった
彼らは、発明したリクライニングにて大儲けをして、その場所から引っ越すことになった
そして、第二次世界大戦が終わった頃、アル(ポール・ベタニー)とその妻ローズ
(ケリー・ライリー)がその家を購入することになった
彼らはリチャード(成人期:トム・ハンクス)、エリザベス(成人期:ローレン・マックイーン)、ジミー(成人期:ハリーマーカス)と言う3人の子どもに恵まれた
映画は、リチャードがマーガレット(ロビン・ライト)と結婚し、ヴァネッサ(成人期:Zsa Zsa Zemeckis)を授かる様子が描かれ、彼らが老人となって、空き家になったところを訪れる様子を描いていく
リチャードは父が施設に入った時に家を譲り受けていたが、どうしても自分の家を持ちたいと言うマーガレットと絶えず衝突してきた
やがて、アルを介護する段階になって、マーガレットとリチャードは別れることになり、アルも亡くなってしまう
リチャードはそこで画家になる夢を追い求めたが、やがてその家は売りに出されてしまった
そして、2000年代に入ると、今度はデヴォン(ニコラス・ピノック)とその妻・ヘレン(Nikki Amuka-Bird)、息子のジャスティン(Cache Vanderpuye)が引っ越してきた
彼らにはラケル(アーニャ・マルコ・ハリス)と言うメイドがいたが、どうやら彼女はコロナによって亡くなり、デヴォンたちも引っ越さずにはいられなくなったようだった
そして、空き家になったところに、認知症になったマーガレットを連れて、リチャードが訪れることになったのである
時系列で書くとこんな感じになるのだが、映画はそれを思いっきりシャッフルしまくっているので、どのような並びになっているのかが分かりづらい
テレビ番組や家具などで時代を表していて、そのシーンを見ている間は大体わかるのだが、度々シャッフルが行われ、シーンが途切れまくるので、かなり見づらい内容になっていた
おそらく、ひとつの家庭内の時系列はそこまでシャッフルされていないのだが、リチャードとアルは別の夫婦の物語なので、ここがシャッフルされると非常に分かりづらい
それでも、その意図が映画から伝わってくれば良いのだが、それを考える余地を与えない演出と構成になっていたように思えた
夫婦の問題として、「金銭の裕福」はどの家庭にもついて回るのだが、リチャードとマーガレットの世代になると「なりたかった自分」と言うものが出現する
そして、彼らの下の世代になるとそれが実現していくのだが、それと同時に描かれる黒人家族の場面では、そう言ったものがあっても危険が多い社会になっていることが示唆されている
だからと言ってメッセージ性が強まっていると言う感じにもなっていなくて、とにかく実験的な映画だったなあと言う感覚だけが残った
いずれにせよ、夫婦に何があれば幸せなのかを描いているように思えるのだが、それが愛なのかお金なのかはわからない感じになっている
それよりも、同じ方向を向いて一緒に過ごしていることが幸福度に繋がっていると思うので、映画内における最大幸福を得たのは発明家夫婦であるように思う
飛行機夫は夢のために家族を犠牲にしたし、リチャードは家族のために夢を犠牲にしている
アルは国に尽くしてきたが、国は国民を豊かにしないし、愛国心は孫の世代に通じていても、そこに感謝の念を示せない
そう言ったアメリカの建国と家族の在り方というものが時代ごとに描かれているのだが、個人的には「時系列シャッフルがない方が伝わりやすい」と思っている
少しずつ変わっていく価値観だからこそ、「あれ? 最初と全然違わない?」と思えるのであって、その違いがシャッフルによって分かりにくくなっているのでは意味がないのではないだろうか
話は分かりやすくなりますが、各シナリオが平凡すぎて、逆につまんなくなるかも、
ソフト化の際に特典として「時系列ヴァージョン」みたいのを収録してもらいましょう(笑)