「人生と大金を天秤にかけて、それでも自分の人生を歩める人が幸福への入り口に立てるのだろう」オークション 盗まれたエゴン・シーレ Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
人生と大金を天秤にかけて、それでも自分の人生を歩める人が幸福への入り口に立てるのだろう
2025.1.16 字幕 アップリンク京都
2023年のフランス映画(91分、G)
70年間行方不明だった名画を巡る騙し合いを描いたミステリー映画
監督&脚本はパスカル・ボニゼール
原題は『Le tableau volé』で「盗まれた絵画」、英題は『Auctionn』で「競売」のこと
物語の舞台は、2000年頃のフランスのパリ
競売を生業とする「スコッティーズ」に所属する鑑定人のアンドレ(アレックス・リュッツ)は、インターンのオロール(ルイーズ・ シュヴィヨット)とともにある老婦人の絵画の取引を行なっていた
そんな彼の元に、ミュルーズの弁護士エゲルマン(ノラ・ハムザヴィ)から一通の封書が届いた
その内容は「エゴン・シーラの鑑定をしてほしい」というもので、その絵は工場勤めをしている青年マルタン(アルカディ・ラデフ)の家に長年飾られていたものだという
マルタンが行きつけのカフェに行った際に美術誌を見つけ、その表紙を飾っていた作品と同じ作風だと感じ取って依頼をかけていた
アンドレはエゴン・シーレのカンバス画など偽物に違いないと考えていたが、エゲルマンから送られてきた画像に息を飲み込んだ
元妻の鑑定士ベルティナ(レア・ドリュッケール)は本物の可能性が高いと言い、一緒に現場に向かうことになった
絵は紛れもなく本物で、その絵画はゴッホの「ひまわり」を解釈して作成されたもので、ナチスドイツによって奪われていた絵画だった
元持主の子孫であるボブ・ワルベルグ(ダグ・ランド)にその事を伝えたアンドレは、彼から破格の提案を受けることになった
その後、ボブが購入をするためにスコッティーズを介するという話がまとまったものの、ボブは急に態度を変えてきた
それは、展覧会にてオーストラリアの美術商サムソン・コーナー(ピーター・ボンク)が絵を酷評したことが発端で、オロールはサムソンが誰かと通じているのではないかと勘ぐる
そして、ある提案を行うことで、再度ボブとの繋がりを保とうと考えるのである
映画は、一連の「ひまわり」オークションの他に、オロールと父(Alain Chamfort)と彼を騙したアーサー(Arthur Toupet)たちの因縁が描かれていくのだが、正直なところ、いらないんじゃないかな、と思った
また、ベルティナとエゲルマンが恋仲になっていく件も取ってつけた感じになっていて、このあたりは配慮なのかな、と感じた
物語は、大金を得ることになったマルタンの決断にテーマ性があり、その行動は会長職を蹴るアンドレと同質のものであると思う
お金に振り回されるのではなく、「好きなことに集中する」というもので、有名な格言にも「大金を得た場合には自分の好きなことに使い、それ以外のことには使うな」というものがある
大金を得て身を崩す人の多くは、自分が不得意なものや、上手い話に乗ったりするからであり、自制しつつ「今の生活を変えない」というモチベーションがあれば、いずれ「お金の使い方」というものがわかってくる
その頃になると、マルタンの夢への道筋も見つかるし、必要な投資というものも行われていくだろう
本作では、お金で右往左往する人を描きながらも、誠実な取引を行うことでWin-Winの方向に向かっているのは良いなあと思った
いずれにせよ、映画は実話ベースなのだが、登場人物などはフィクション仕立てになっているようだった
パンフレットは人物相関図はないものの、登場する人は大体何者かわかるのでOKだと思う
オークションシーンは後半にちょっと出てくるだけだが、流れるような競売は見ていて面白いし、その場を盛り上げて綺麗に流していくのも見どころがあった
サクッと見られて、絵画の詳しい知識とかもいらないので、興味のある人は足を運んでも良いのではないだろうか