劇場公開日 2025年1月17日

「上品でした」ストップモーション yudutarouさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0上品でした

2025年1月26日
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鑑賞方法:映画館

 コマ撮りアニメと作家の狂気の物語というのは安直なアイデアにも思えるものの、監督はホントにそれ系の作家なので製作者のリアルとして作っているのだとは思う。しかし劇中に発生する悪夢的な事柄は全て脳内のお話として一線を越えることなく語られるので、映像表現としてはグロくても映画としては上品な作りになっていて、アート寄りと言えばそれまでだけど、そこが歯痒く物足りなかったりはした。脳内で組み上げた狂気のコマ撮りアニメたちが虚構を突き破ってこちら側に来てこそ、ストップモーションアニメと作り手の両方を前面に押し出した作品にした意義があったのじゃなかろうか。なのでせっかく気色悪く不気味な出来のコマ撮りアニメも、結局は劇中作家の作り物としての存在にしかなり得ず、それならコマ撮りアニメだけを単体で作品とした方が、より悪夢的世界を本物として提示出来るんじゃないかとも思えてしまった。しかしコマ撮りアニメを紹介しつつ作り手が狂気に堕ちていく物語をスマートに語っていく手際は見事だし、雰囲気もあるしで、アーティスティックなホラーとしてクオリティが高い作品なのは間違いない。そもそも被支配性とか、そちらを描きたいみたいだし、悪夢の決壊することにも興味はそんなに無いのかも知れない。ただ個人的に、コマ撮りに生肉を使うような変態ならシュヴァンクマイエルみたいに悪夢が現実にハミでてくるぐらいの映画を見せて欲しかったという勝手な願望がどうしても出てきてしまうんだよな。ちなみにサメ映画とか殺人鬼映画の類と思って(ホラーだから一緒に行こうぜと誘った…)ついてきた息子は、わりとグロかったけど、まあ面白かったと言ってたので、それは良かった。

yudutarou