「テミスの不在」満ち足りた家族 uzさんの映画レビュー(感想・評価)
テミスの不在
ちっとも『満ち足りた家族』じゃない。笑
そう思ってたのは、せいぜい序盤のジェワンくらいか。
煽り運転を煽り運転する冒頭の事件は、本筋には大きく絡まないもののテーマには深く関わってくる。
最後の駆け引きにも少し関わるし、この塩梅は上手い。
基本はメインとなる6人に焦点が当たり、いじめっ子やパリピなどは背景説明程度の役割。
大病院の医師であるジェギュも高収入のハズだが、コーンフレークを食べたりカップで酒を飲んだり庶民的。
照明も彼の家の方があからさまに暗いし、この辺はわざとコントラストを強く出したか。
(それともボランティアに相当注ぎ込んでるのか?)
不満や戸惑い、見栄や対抗心、価値観の違いなどが見え隠れする最初の会食シーンは面白かった。
そこでの印象が徐々に揺らいでいくのだが。
粗筋では拝金主義と思われたジェワンは、どちらかというとリアリストで、最後は一番まとも。
ボディメイクに余念がなく、嫌味な意識高い系に見えたジスは、その実微妙な立場に惑っていた。
道徳的とされるジェギュは理想論を語っているだけに見え、その薄っぺらさが次第に露呈してゆく。
介護疲れに同情を感じていたユンジョンは、我が子のみに盲目的な弱い母親だった。
平然と日常を続けるヘユンはサイコパスに見えるが、しかしその罪悪感の薄さは周囲から気付き易いものだ。
しっかり涙まで流して父を騙す、自覚あるシホの悪意の方が心底恐ろしい。
この手のタイプは刑務所に入れても要領よく出所して更生しなさそうなので一番厄介に思う。
前フリが分かり易すぎてラストが見え見えなのと、悪魔の子らが放置されて終わるのはやや残念。
「怖いのは過ちに気付かないこと」という台詞が刺さる。