劇場公開日 2025年1月17日

「精緻な構造で魅せる家族劇」満ち足りた家族 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0精緻な構造で魅せる家族劇

2025年1月28日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

ホ・ジノ、ソル・ギョング、チャン・ドンゴンが組んだ本作は、タイトルやビジュアルから想像できる通りの家族の崩壊劇でありながら、まるで舞台戯曲がベースにあるかのように(実際はオランダ生まれの小説が原作)、細部と細部が噛み合ってカチッと音が響くほどの構造の精密さが光る。あらゆる要素を現代韓国へ綺麗さっぱり置き換えた翻案ぶりも見事。そこからは静かな衝撃が続くのだが、目を覆いたくなる、というよりは、むしろどんどん瞳孔が開き、目が釘付けになっていく展開というべきか。正反対の性格の兄弟が盤上の駒のようになす術もなく運命に突き動かされていく過程は、このメンツだからこその見応え感がたっぷり。さらに妻役の二人をはじめ、多彩な表現力で胸の内をあらわにできるキャストがずらり揃ったことによって、役柄的には不揃いな個々が、その実、驚くほど効果的に機能し合いながら、物語の全体像を不気味で秀逸な最終形へと至らしめている。

コメントする
牛津厚信