「旗艦」「SHOGUN 将軍」エミー賞受賞記念上映 第一話、第二話 U-3153さんの映画レビュー(感想・評価)
旗艦
ディズニー+で全話視聴。度肝抜かれた。
ホント…ホントに!よく出来たと思う。
ほぼ日本語だわ、首は飛ぶわ、内臓は出るわ…んで、プラットホームがディズニー+って。ホントに、よくこの企画が通ったと驚く。
内容云々よりも、まずはその事を絶賛したい。
なんか、格式高かった。照明や色味もそうだけど、アングルとか…こう重厚な創りだった。
NHKの大河でやってもああは出来ない。明るくしなきゃダメっぽいので。時代劇だからというか、なんというか…ああいうトーンが正解だと思う。
案外、アクションは少ないものの、インパクトが絶大ではあった。切腹もそうだけど、首を落とすカットとかめちゃくちゃ良くできてて、頸椎まで見えたりする。こだわりなんだと思われる。
物語も結構凝ってて…日本史をちょいと齧った人なら、登場人物のアレがアレで、コレがコレなんだなぁと分かる。
虎永の深謀遠慮がもの凄くて…それに絡めて、戦国の世の慣わしだとか、精神性だとか、コッテリ入ってくるから海外の人には物珍しいのだと思われる。
日本ってホントに独特だ。
物静かで上品な単語の調べもそうだけど、途中に出てくる3つの心とか、忠義とか、女性の生き様とか…ホントに怒涛の如くぶち込んである。
人間の相関図というか上下関係というか、しきたりとか海外の人は混乱しないのかなと心配になってしまう。
そう、ちゃんと、しっかりとした時代劇だった。
物語の骨子は珍しいものじゃない。むしろ王道だとは思う。だけど、見せ方というか、引き絵の強さというか…世界観の在り方がずば抜けてた。
金のかけ方がもう…腹が立つくらい違う。
コンテンツとしての時代劇は、しっかり金と労力をかければ死んでないんだと思った。
台詞や所作かも見事だった。衣装も凄いし…。日本じゃあんま見かけない男優や女優さんが、まぁお上手だし。虎永の正室の人とかホントに達者だ。所作指導の人はホントいい仕事したと思う。
撮影が始まってからも大変だったろうけど、始まる前の方が数倍大変だったろうなぁと思う。
人も物も全部持ち込まなきゃいけないし、作んないと無いものばっかだったろうし、どんだけの規模でやったんだろうとホント想像つかない。
障子を開けるにしたって、カナダのどこにも無いわけで…向こうの大工捕まえて説明するより日本の美術連れてった方が早いだろうし、和紙やら骨組みやら枠からして作らなきゃ出来ないもんだと思う。
日本でやるなら、まだ買えば済むが通用するけど、きっとそうでは無いと思うから。
大広間に敷き詰めてある畳とか、真新しい藁の座布団とか…絶対必要で代替え品なんかないんだけれど、一から作らなきゃいけないものが多すぎて、スタッフの仕事量を想像すると途轍もない!
ともあれ、1つの基準が出来たんだと思う。
生半可な道程ではなかったであろう事は想像に容易いので、エミー賞ってものが取れて良かったと思う。
作中でもあったけど「紅天」が成された瞬間だったと思われる。
いや…ホント…心の底からお疲れ様でしたと言いたい。
◾️
ここからは日本人だからこその憂鬱で読まなくていい。
色々事情もあるだろうが物言わぬ大衆達を見てDNAに刻まれた呪いのようなものを感じてた。
武士以外の人間は武士の為に生きてるように見える。
滅私奉公なんて言葉もあるけれど、それすら生温く自身の存在すら隠そうとするような佇まいである。
実際はエキストラなので、撮影時の都合もたぶんにはあるものの、そんな絶対的な身分制度を感じつつ、現代の日本を憂う。
武士の時代から続くしきたりから抜け出せてないんだなぁって。
例えば秀吉にしたって権力者である信長に尽くし倒して出世する。「尽くす」って言葉は美談っぽいけれど、忠義って精神が無ければ「媚を売る」と同等だと思う。で、やっぱり上の人間は自身に人徳がある前提でその関係を受け取る。…それが大間違いだとは思うが。
詰まる所、そういう見本がある。
引き合いに出せてしまう。
秀吉のように振る舞えば、出世できるかもしれませんよ?目の前にぶら下げる人参としては最適解の見本がある。
なんか、そんな醜悪な区分がずーっと流れて、今も継承されてるのかもなと悍ましさも感じた。
作品としては、そんな事を薄っすら考えてしまえる程、徹底してたのだなぁと思う。