「【”ブラックベリーと黒ツグミの贈り物。そして人生はそんなに悪くない。”今作はブラックベリー好きの中年女性が崖から落ちて死を感じた事から、笑顔無き人生が動き出す様を描いた人生肯定映画である。】」ブラックバード、ブラックベリー、私は私。 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”ブラックベリーと黒ツグミの贈り物。そして人生はそんなに悪くない。”今作はブラックベリー好きの中年女性が崖から落ちて死を感じた事から、笑顔無き人生が動き出す様を描いた人生肯定映画である。】
■ジョージアの村で日用雑貨を扱う店を営むエテロ(エカ・チャブレイシュビリ)は、いつものようにブラックベリーを詰みに行った時に、観たことが無いような黄色い嘴の黒ツグミを見る。が、その瞬間に川沿いの崖をズルズル―と落ちてしまい、死を意識する。
彼女は、店に戻ると商品を配達に来たムルマンに顔を近づけ、くんくんと匂いを嗅いでから、自ら積極的にセックスをする。そして、48歳にして処女を失うのである。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・まずは、エテロの怒っているような大きな眼のインパクトが凄い。身体も大柄だ。お店に行って大好きな”ナポレオン”を食べていると、ウェイトレスから”あのお爺さんが、あの女は何であんなに太っているんだ太っているんだ、と言ってます。”。などと言われてしまうが、彼女はギロッとした目と太い眉でお爺さんを見るだけだ。クスクス。
・小さな町の口さがない女性達も、48歳独身のエテロの生活に興味津々。”男も愛も知らないんじゃない?おっきなお尻!”などと言われるが、逆に彼女は”何で、愛を知ってるアンタたちは幸せそうじゃないの?”と言い返すのである。
・けれど、妻のいるムルマンと、頻繁に密会するエテロ。ムルマンは積極的に彼女にアプローチをする。エテロは笑顔一つ見せないが、それに応えるのである。この辺りが観ていて何だか、可笑しいのである。
・だが、ムルマンはある日”トルコに行って、トラックドライバーになる。ここの一か月分の給料が一日で稼げる。だから、暫く会えない。”と言うが、エテロはあんまり気にしない。そして、ムルマンから”一緒に来てくれないか。”と言われるも”独りの生活が良いの!”と言って意に返さないのである。
・そんなある日、エテロはブラックベリーを詰みに行った時に、小用をする。すると、ショーツに黒茶のおりものが付いていて彼女は不安になる。彼女の母は、子宮がんで亡くなっているからだ。大好きなブラックベリージャムを食べても、味が変なのである。
序でに彼女の父と兄は酷い人だったらしい。それも彼女の生き方に影響を与えているようだ。ロック好きの青い髪の少女に子宮がんについてスマホで調べて貰い、町の女達に首都トビリシの腕の良い産婦人科を教えて貰い、父と兄の遺品を町の女達に上げてから彼女はバスで診察に行くのである。
■病院でエコー検査をして貰うエテロ。相変わらず仏頂面だが、少し不安そうだ。だが、老医師の口から出た言葉は”おめでたですよ。貴女の年では珍しい。”であった。
エテロは、町の喫茶店で大好きな”ナポレオン”を注文するが、それには手を出さずに、その横のエコー検査の写真を取り出して見るのである。
その瞬間、彼女の脳内には黒ツグミの妊娠をお祝いするかのような鳴き声が響き渡り、彼女の大きな目はみるみると涙に満たされて行くのである。
<今作は、ブラックベリー好きの中年女性が崖から落ちて死を感じた事から、笑顔無き人生が動き出す様を描いた人生肯定映画なのである。>
<2025年3月16日 刈谷日劇にて観賞>