「そろそろ落ち着いた生活を考えるような歳になって、強烈に割り込んできた人生の転換期とも呼べるイベント。どう向き合うのが良いものかと悩ましい気分にさせられる作品です。」ブラックバード、ブラックベリー、私は私。 もりのいぶきさんの映画レビュー(感想・評価)
そろそろ落ち着いた生活を考えるような歳になって、強烈に割り込んできた人生の転換期とも呼べるイベント。どう向き合うのが良いものかと悩ましい気分にさせられる作品です。
黒い鳥と黒い実。何かを象徴する言葉なのだろうかと、予告を
観てから気になっておりました。危うく不慮の事故で命を落と
す所だった主人公のその後の行動も気になりました。
そんな訳で鑑賞することに。
…したのですが うーん。
あまりプラスの感情が出てこない作品だったような気が…。
というのが正直な感想です。*△*;
主要な登場人物はというと…。
主人公はエテロ♀。48歳独身。雑貨屋を営み生計を立てている。
仕入業者のムルマン♂。孫がいるらしい。エテロより年長か?
その他、エテロと昔からの知人女性が数名。性格悪い気が…。
エテロの母は、恐らく出生時に体を壊したことで早世。
そしてこれも恐らくなのですが、エテロがある程度の年齢になる
と、家の中のこと全般をするようにと父と兄に押しつけられたの
ではないかと思われました。うーん。
人との出会いの機会が無い生活の中では、恋愛などは望むべくも
なく、この家の女中のような生活を強いられ、あげく二人とも亡
くなったものかと、これも想像。
残されたのは雑貨屋。そこからの収入で細々と暮らす毎日。
時折、近くの山へと出かけ、崖の上でプラックベリーを採取して
はジャムにするような慎ましい生活をしていました。
そんなある日、崖から落ちかけます。
綺麗な黒い鳥が飛んで行くのを眺めていたヘテロ。
家に帰ろうとした瞬間、足を滑らせて崖の下に滑落。きゃー。
必死に崖の上まで昇りきったヘテロ。
帰り道の橋の上で、溺死体となった自分の姿を想像し身震い。
” 死とは、こんなにも身近に !”
そのことを強烈に認識したヘテロ。
仕入品の配達に来た男に” 異性の匂い ” を感じると同時に
強烈な性的欲求が沸き起こり、男と肉体関係をもってしまう。あー
徐々に変化が起きていく。
本人の意識にも、行動の仕方にも、そして周囲との付き合い方にも。
そしてある日。この日も山に出かけたのだが、
尿意を覚えてお花積み(※)。そこで、あることに気がつく…。
” ? ”
病気を疑って都会の病院に検査に行くのだが…。
※他の言い方もあるようです。キジ撃ちとか。
と、まあ
一人の女性の人生の中で
50歳を目の前にした女性に起きる変化を、途中まではとても
淡々と描いたお話でした。最後のイベント発生までは…。
人生の一大事ともいえる重大事の連続。
一難去ってまた一難(?)のエンディング
これからどうするだろうか
問題を上げ欠けられて投げ掛けられて終わったような
そんな気分で映画館を後にしました。
観て良かったか は、微妙です。
けれど色々と鑑賞後に考えさせられる作品なのは、
間違いないかと。@-@ウーム
◇あれこれ
■飾られている写真
棚の上の写真(3人分?)が誰の写真か気になりました。
普段 飾っているのはおそらく 父と兄?
もう一人の写真は、小さい頃 兄から写真を盗んだ女の子?
それとも、ヘテロには記憶もない” 母 ” なのか。
■ブラックバード
何かの象徴として描かれているような気がしたのですが
良く分かりませんでした。・△・
崖から落ちる場面以降は出てこなかった気もしますし…。
あまり重要な意味は無かったのでしょうか…? @_@
ちなみにヨーロッパでは「クロウタドリ(ツグミ科)」を指す
ようです。(ジョージアはヨーロッパ?アジア? 境界?)
■描かれる時代
この作品の時代がいつなのか、ヘテロの生活環境を見る限り、
日本の感覚としてはそれなり昔の話かとも思えたのですが、
友人の娘に病気の症状の検索を頼む場面をみていると、単に
ヘテロの生活が前時代的なだけのような気もしました。
ジョージアの都市部と田舎、中年と若者の違いなのかな。
◇最後に
診察を受けた後の場面。
突きつけられた現実を受け入れきれず店の中のテーブルに突っ
伏し、自分の感情を持て余しているかのようなヘテロ。
恐らく泣いていたのではと思うのですが、顔を上げたその表情
に、一転して笑みが浮かぶのです。
この微笑みがどんな感情を表しているのだろうか と考えている
のですが、結論に至りません。
絶望なのか (どうしようもなくなったら、あの崖から…)
決心なのか (何としても産んで育ててやろうじゃないの)
決意なのか (あの男、逃がさないわ 追っていくわよ)
悟りなのか (何を考えても始まらないわ、無の境地よ)
良い未来へとつながる選択肢は何でしょうね。うーん。
※ジョージアに赤ちゃんバンクってあるのかな…
☆映画の感想は人さまざまかとは思いますが、このように感じた映画ファンもいるということで。