「時間軸をバラバラにした効果があったとは思えない」We Live in Time この時を生きて tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
時間軸をバラバラにした効果があったとは思えない
物語の時間軸がバラバラなのは、「癌との闘病」という重たくなりがちな話に、コミカルなアクセントを加えたかったからだろうか?
確かに、夫が、元妻との離婚届にサインしようとしてから、交通事故の被害者と加害者として現在の妻と出逢うまでの経緯とか、出産が迫った妻を病院に送り届けようとして、縦列駐車の前後の車に阻まれるシーンとかには、どこかトボけた味わいがあるし、渋滞で動かない車の中で産気づいた妻が、近くのガソリンスタンドのトイレの中で出産するくだりには、スリルと笑いが入り混じった面白さがある。
その一方で、妻が坊主頭になるまでは、「現在」と「過去」との区別が付きにくく、場面の繋がりの悪さに混乱するし、自分の頭の中で時系列を整理するのも大変で、果たして、このような構成にする必要はあったのだろうかという疑問も残る。
中でも、子供を欲しがっていなかった妻が、卵巣癌になって、初めて子供を設けるということを現実の問題として認識し、卵巣の1つを残す決断をしたということが、物語の中盤で明らかになるのだが、この決断が、後の出産や癌の再発という流れに繋がっているだけに、もう少し早く知っていれば、物語を観る目も違っていたかもと思えてならない。
さらに、冒頭で、妻が、憂鬱な治療を受けるか、明るく前向きな余命を送るかで悩んだのは、癌治療の辛い経験があったからだろうが、その割には、最初の治療の状況はほとんど描かれないし、結局、妻が、延命よりも「生活の質」を選び、医者に緩和処置を要望するような場面もなかったことには、闘病モノとして「舌足らず」な印象を受けざるを得ない。
その「生活の質」にしても、妻が選んだのは、料理コンテストに挑戦するということなのだが、確かに、娘に、「弱っていくだけの自分を覚えていてほしくない」という妻の気持ちも分からなくはないものの、むしろ、家族と一緒に過ごす時間をできる限り確保するという選択肢もあったのではないかと思えてならない。
ましてや、妻が、コンテストの練習のために、娘の保育園のお迎えをすっぽかしてしまうことなど、本末転倒も甚だしいと思えるし、自分が頑張る姿を見せたいはずなのに、コンテストに出場することを、家族に隠そうとした理由もよく分からない。
確かに、命が尽きるまで、シェフとしての道を極めようとした妻の姿は感動的ではあるものの、スケート選手だったとか、バイセクシャルだったとかの妻の過去の設定は、果たして必要だったのだろうかという疑問も残った。
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