劇場公開日 2025年2月21日

「お笑い構成作家の身に起こった数奇な出来事」死に損なった男 まつこさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5お笑い構成作家の身に起こった数奇な出来事

2025年2月23日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

笑える

楽しい

好きな作品のひとつになった。設定がほんと面白かった。行き詰まって線路に身投げしようとしてた主人公の関谷一平は、ひとつ前の駅で起きた人身事故により自身は死ななかったのだがその人身事故で死んでしまったおじさんの幽霊に取り憑かれることになる。
関谷一平は空気階段の水川かたまり、おじさんは正名僕蔵。このキャスティングが絶妙だった…!!
関谷一平は、お笑いのプロダクションに所属するお笑い担当の構成作家。ファンも居たり、作家としてはそこそこ一目置かれている立場。
元空気階段ファンとして言わせてもらうと、かたまりに当て書きして書いたんじゃないかと思う脚本過ぎて…。(監督も当て書きなのかと複数の人に聞かれたらしいけど納得)。もはやこれは関谷一平の話でもあるけど、かたまりが、空気階段にはならずにお笑い芸人にはならずに、お笑いの構成作家として生きて行った場合のパラレルワールドの水川かたまりの人生を映画化した作品にもみえた笑。構成作家として生きるかたまりの身に、元国語教師のおじさんの霊が憑いたら、その娘さんを救わなきゃいけなくなったら、そのおじさんとコントの設定を共作することになったら…こういう言葉を言ってこういう展開が待ってるんだろうなっていうリアリティのありすぎる内容。かたまりの実績や人となりを知ってる人からしてみれば、面白くて仕方ない内容だったと思う。
最近マルセイユも劇場でよく見るから、ピラティスを演じたマルセイユのふたりの演技も好演で、感情移入しちゃった。他にも現役芸人の人がたくさん出ていて、自分の好きな業界の話だったので終始良かった。
一番の見所である、ピラティスの次へのステージがかかったコンテストの見せ場のシーン。めちゃくちゃ面白くてめちゃくちゃ泣けた…。色んな人たちの想いが重なって、爆笑しながら号泣して忙しかったよ…。(バンドとかお笑いの映画って、成果物というか、色々試行錯誤して出来た音楽やネタが、端折られたりするとモヤっとするのに、作品によっちゃライブのシーンだとかネタをやるシーンが省略されたり省かれたりするから、この映画がそういう映画になってなくて本当良かった。エンドロール見たらコント監修が板倉だった。ちゃんとしてて良かった)
ラストの方や終わり方もすっごく良かったなぁ。
こういう、ドラえもんで言うドラえもんだったりヒカルの碁で言う藤原佐為的な主人公の人生を良い方向にしてくれる幻的な人って、いつの間にか消えちゃうとかやたらと切ない泣けるシーンでこちらの感情を揺さぶってきたりするけど、この映画はそこを主軸とはしてないし、色々気になるところはあれどこの作品の持つ淡々とした雰囲気のままいくのでめちゃくちゃ良かった。あと個人的好きなシーンとして、ラーメン屋のシーンでラーメン頼む時にやたら声デカくなってラーメン屋の店員みたいなラーメンの注文してるかたまりが可愛すぎた笑。かたまりらしさで言えば、おじさんの娘の危ないところを助けるところとか、体痛めて横になりながらペットボトルのお茶を飲むところとか、自分の意思じゃない事をなんとなく流れでやらされてくところとか、らしさが際立つ見所がいっぱいあって…思い出すだけで笑っちゃうポイント盛り沢山だったな笑。私は行ってないけど舞台挨拶でもぐらが出て来て、もぐらもこの映画ちゃんと観てたの嬉しかった。絶対空気階段はこの映画好きだもん。
田中征爾監督の前作の「メランコリック」観てた時も、かたまりみたいな主人公だなぁと思ったけど、パンフにもよくそれを言われたと書いてあった。監督は、何かを主人公が課せられた時、その課題に1番沿わないキャラにそれをやらせるのが好きらしい。それが好きとのことだけど、その展開を映像化するの多分めちゃ上手いこの監督笑。
監督・脚本・キャスト、そしてmoshimossの音楽ね…ぴったり過ぎ。超かっこ良い。エンドロールまで世界観に堪能出来る音楽を流してくれる映画が私は好きです。
観れて良かった、好きな作品です。

まつこ