「進撃のトリックスター」ブラック・ショーマン ジュン一さんの映画レビュー(感想・評価)
進撃のトリックスター
原作の〔ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人〕について
「wiki」先生によると
『福山雅治』が「ダークヒーローを演じてみたいんです」と話していたことを思い出し、
彼の演じる悪党を見てみたいと思ったことがシリーズ執筆のきっかけ、
とされている。
ある種の「当て書き」且つ映像化前提の作品と見てよいか。
なるほど、名刺代わりの導入部は
『福山』演じる元マジシャンの『神尾武史』が、
お得意の「スライトオブハンドマジック」の応用で
捜査にあたる警察を煙に巻く様子が繰り返される。
文書よりも映像で目の当たりにした方が、
印象がより強烈に残る好例。
もっともこの時点では、
彼の不遜な態度に観る側はアンチパシーさえ覚えてしまう。
が、後半部では、次第に
人の心理を操作する技法に移って行く。
同じ手技の繰り返しは飽きが来るので、
目先を変える意味でも、これは極めて正しい判断。
それと共に、事件への向き合いの背景にある『武史』の想いも明らかに。
一見して鉄面皮も、実際は肉親を亡くしたナイーブな感情が語られ、
主人公の見え方が180°転換する瞬間。
昔ながらの推理モノの構造はきっちりおさえられている。
『ホームズ』は『神尾武史』、
『ワトスン』は父を殺された姪の『真世(有村架純)』、
『レストレード警部』は『木暮(生瀬勝久)』との人間関係をはじめとして。
それは謎の構成についても同様。
ため、登場人物の会話を注意深く聞いていれば、
物語りのかなり早い段階で
真犯人も動機も見当が付いてしまう。
もっとも犯人は、
制作サイドが仕組んだ明快な構図も別にあるのだが、
これは外見をぼやかすことで
巧く目くらましができている。
なので本作の見所は犯人当てよりも、
捜査の過程で次々と顕わになる数多の容疑者やレッドヘリングを
(中には、主人公を犯人と指し示す物証らしきものも)、
マジックのテクニックを駆使し
どう紐解いていくかの過程を楽しませることにあるよう。
当初は父の仇討ちのための協力だった『真世』のスタンスが、
次第に謎を解くことの目的にシフトして行く過程の変化も面白い。
恒例の謎解きが終わった後の犯人の行動と、
それに対処する主人公の準備も、
予想通りの展開。
これほど簡単に思いつく流れを用意するのは、
先読みができたぜと、観客を心地好くさせるための
サービス精神の発露なのか。
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