「なぜ九龍なのか? なぜ日本人なのか?」九龍ジェネリックロマンス バラージさんの映画レビュー(感想・評価)
なぜ九龍なのか? なぜ日本人なのか?
劇場公開時に観ていたが感想を書いてなかった映画。原作はマンガらしいが未読、というか存在自体知らなかった。なんとなくタイトルとポスターデザインが良かったんで観てみた。
うーん、俳優陣はみんな好演だし、監督の演出もいいのだが……脚本が悪いのかなぁ? それともそもそも原作の問題? あるいは原作と映画化もしくは実写化の相性の問題なのか? とにかく序盤30分くらいは話が飲み込めず、この映画は何を描きたいんだ? 何が言いたいんだ?と首をひねるばかりだった。そもそも状況設定がいまいちよくわからない。SFっぽいところもチラッとは出てくるが、それがSFなのかファンタジーなのかそれとも主人公の妄想なのか判然とせず、なんとなく話が進んでいってしまう。
中盤あたりでようやく話が見えてくるが、そうなるとまた別のところが気になってくる。そもそも九龍(ジェネリック九龍だが要するに九龍)を舞台とする意味というか必然性がほとんど感じられない。別に日本のどこかの街でもいい話のように思える。九龍が舞台なのに主要人物3人は日本人だし、日本映画では昔からだが中国が舞台でも中国人(香港人・台湾人)役を日本人俳優が演じてるため、なんだか安っぽく見えてしまう。マンガやアニメなら絵だから中国人が流暢な日本語をしゃべっていてもさほど不自然に感じないかもしれないが、実写になるとすごく不自然に見える。何より演じてるのが日本人俳優なのは誰が見てもわかるわけだし。まあ日本を舞台にしたら原作の大改変になっちゃうし、タイトルも変えなきゃならないから無理かもしれないが、実写作品としてはそっちのほうがきわめて自然なように思う。逆にあくまで九龍を舞台にするなら全員香港(か中国・台湾)の俳優が演じる香港映画として製作したほうが良かったんではあるまいか? まあ、これもそもそも香港(か中国か台湾)の側から映画化のオファーがなければしょうがないが、九龍を舞台とした実写作品ならやはりそっちのほうが自然に感じる。
主演の吉岡里帆は演技も上手いし何より神がかり的に可愛く、カメラも彼女の魅力を余す所なく映し撮っている。相手役の水上恒司をはじめ竜星涼などの助演陣もみな好演である。監督の池田千尋という人は実写映画『君は放課後インソムニア』を監督した人とのことで、そっちはとても良かっただけあって本作でも演出は問題なく良かったと思う(80年代大林宣彦的ファンタジー映画の風味もそこはかとなく感じられなくもなかった)。でもそれだけじゃ良い映画にはならないんだな。難しいもんですね。
