「日本の今のマスメディアの現状をつぶさに反映させたリメイク。」ショウタイムセブン レントさんの映画レビュー(感想・評価)
日本の今のマスメディアの現状をつぶさに反映させたリメイク。
電力会社による過酷な工事で犠牲を強いられた労働者たち。彼らの声を無視し続けた大企業、そしてその実態を社会に発信してほしいとマスメディアに最後の望みをかけて訴えた声さえも握りつぶされた無念。追い詰められた犠牲者たちは最後の賭けに出るしかなかった。
営利追及に偏り視聴率競争に明け暮れたはてに本来担うべきはずの社会的使命が忘れられて久しいマスメディア、その現状にくさびを打ち込もうとした作品。
主人公の折本はかつてはジャーナリズム精神にあふれたアンカーマンのはずだった。しかし彼はジャーナリズム精神を捨て去り出世の道を選んだ。まさに彼の姿こそ営利だけを追求し権力に迎合するマスメディアを象徴した姿だった。
犯人の標的は初めから折本らマスメディアであった。自分たちの声を代弁するはずのマスメディアがその役目を放棄し権力になびいたことが許せなかった。裏切り者に制裁を加えて今度こそ事実を彼らによって暴露させる。そして犯人たちの目論見は成功する。
本作は犯罪に手を染めない限り真実を暴露できないくらいに報道が堕落している今の現状を描いている。
オリジナル作品とはほぼ同じ内容だが特に日本の今の現状、すなわち報道の自由度において先進国内で常に最下位に甘んじているという現状を皮肉った内容には仕上がっている。しかしいかんせん映画作品としての完成度は低い。
いわゆるリメイク作品を任された監督としてはオリジナルの良さを取り込みつつ、リメイクを作るうえで自分のクリエイターとしての色を出したいと思うだろう。ただの焼き直しでは終わりたくないだろうから。
オリジナルとは異なる製作された時代背景を大きく反映したものにしたい。自分独自の主張を作品に込めたい。そのようにして時にはオリジナルを超える優れたリメイク作品も世に出されてきた。本作もそんな作り手の意気込みが感じられる作品にはなっている。ただ残念なのがオリジナルとほとんど台詞も同じところは問題ないにしても作り手が自分の色を出そうとアレンジしたところがことごとく失敗してるのが残念でならない。
例を挙げると作品冒頭で犯人が出演料を吹っ掛けて他社と天秤にかけようとする場面、これはオリジナル通りだが本作はオリジナルと違い犯人の標的はあくまでも主人公なのだからこの場面はバッサリカットすべきだった。そうすれば意味のない血判状のくだりも必要なかった。
また中盤現れる犯人の恩師、ピンマイクをはじめすでにスタジオのどこに爆弾が仕掛けられてるかもわからない状況下で警察につれられた彼がご丁寧にピンマイクをつけて現れる。明らかにおかしいとわかる。案の定後ほど共犯者であることがわかるが、主人公を追い詰めるためのブラフとしてあまりうまいやり方とは言えない。この点もオリジナル版の警察署長殺害のシーンをアレンジしたものだろうがあのシーンは作品テーマに合致していただけにこのアレンジも失敗している。
あと細かな演出の古臭さも目立つ。女刑事がサブスタジオに乗り込んでくるシーン、今時あんな警察手帳を高々と見せびらかすように現れる警察がいるだろうか、暴力団事務所とか有無を言わさず制圧する場面ならまだわかるが相手は良識ある人間たちである。この辺は昔ながらのテレビ演出に染まった悪い癖が出ている。キャスティングも良くない。女刑事はオリジナルと比べて知性的ではないし、あのアイドルに演じさせた女性キャスター、あれは大衆受けを狙い堕落したマスメディアの象徴としてあのキャラクターを創造したんだろうが如何せん芝居が下手すぎてノイズにしかならなかった。あとベテラン俳優の吉田鋼太郎の芝居もひどい。
兎に角役者陣の芝居がすべてへたくそに見えるくらいそのテレビ演出が作品全体のレベルを下げてしまっている。
そしてこのリメイク最大の売りであるアレンジポイント、ラストで主人公が犯人に向かっていい番組作りができたと満足そうに述べる。この事件のおかげでジャーナリズム精神を取り戻すことができたという意味を込めての感謝の言葉。まさにテロ事件でもない限り事実が報道されないという今の現状を皮肉った本作一番のアレンジポイントであっただろう。しかしこの言葉をマスメディアの堕落の象徴である主人公の折本に述べさせるのはいかがなものか。折本は自分から真実の報道と出世を天秤にかけた人物である。ジャーナリズム精神を重んじるなら出世は拒むべきだった。自分こそが堕落の象徴であるのにこれではどこか他人事のように感じられてしまう。
そして一番意味不明なのが最後の世論調査。私は死ぬべきか生きるべきかを視聴者に問う。これもオリジナルで主人公が命をかけた場面のアレンジのつもりだろうが意味が分からない。
総じてオリジナル版の劣化版としか言いようがない作品。テレビ映画として及第点というところか。その点では配信スルーで正解だった。
こんにちは。
レントさんのレビューに激しく共感致します!
私もオリジナルは見ており、ザ!韓国映画!って感じでしたが、やはり巧かったと思います。
本作はもーーーーーーちょっとどうにかならなかったのか、誰も監督にモノ申さなかったのか、色々残念でした。
鑑賞後しばらくして阿部さん主演で「キャスター」ってTVドラマが始まるのを知りました。
何というタイミングだよ(°▽°)と思いました。
あ。ドラマ見てません。。笑