劇場公開日 2025年2月7日

「“生放送”の緊迫感」ショウタイムセブン 泣き虫オヤジさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0“生放送”の緊迫感

2025年2月11日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

怖い

興奮

阿部寛は特別好きな男優ではないけれど、彼の作品にはあまりハズレが無いのは事実。映画では久しぶり(調べたら2022年夏以来)だったので楽しみにしていた。

【物語】
折本眞之輔(阿部寛)はTV局のジャーナリスト。精力的取材と鋭い追求により数々のスクープを視聴者に提供し、人気番組「ショウタイム7」のメインキャスターに登り詰め、国民的ニュースキャスターとなる。しかし、あるとき「ショウタイム7」から降ろされ、今は地味なラジオ番組に出演していた。

ある日ラジオ番組の生放送中、聴取者と電話で話すコーナーで電話の相手がテーマと関係ない勝手なことをしゃべり出す。ついには都内の電力会社の発電所を爆破すると言い出すが、折本はいたずら電話だと軽くあしらうが、直後に外で爆発音が響き、窓から外を見ると発電所の方向に火柱が見えた。

折本は動揺するが、これは千載一遇のチャンスだと考え直す。犯人は必ずもう一度電話を掛けて来ると確信し、犯人との会話をTVで生放送すれば、とんでもない視聴率をとれることは確実で、自分が犯人と対峙すれば表舞台に返り咲けると考えたのだ。

折本の読み通り犯人から再度電話が掛り、折本は「ショウタイム7」プロデューサー・東海林剛史(吉田鋼太郎)に詰め寄り、生放送中のショウタイム7のスタジオに乗り込み、犯人との通話の独占生中継を実現する。狙い通りとほくそ笑む折本だったが、犯人はスタジオにも仕掛けてあった小爆発を起こし、折本を含む番組キャストとスタジオに招待されていた一般視聴者は人質になり、無理難題を要求する犯人を前に全員の命が危険に晒される。

【感想】
阿部寛主演作品はホンワカした柔らかい空気だったり、サスペンス調のピリピリした空気だったり、幅亜広いが、本作はこれまで観た中で一番ヒリヒリした。

本作の一番の“売り”はこの緊迫感の演出だろう。映画でありながらあたかも生放送を観せられているような感覚に陥った。画角的もTVの画面を見ているような映し方を多用して“生”感を巧みに出している。

「犯人に目的は何なのか?」が作品の最重要ポイントになるが、その謎を巡るストーリー展開も良かった。

役者については、
阿部寛については、今回は自信過剰で、打算的で、上から目線でものを言う“嫌な男”を演じている。調子に乗った折本が犯人に追い詰められて行くが、こんな嫌な男だからこそ観ていて面白い。こういう役も出来るというところに阿部寛の才を感じる。

吉田鋼太郎は偉そうで、調子が良くて、かつサラリーマン的保身が前面に出てる役、こういう役をやらせたらすごく上手い。

また、ここで名前を挙げるのは控えるけれど、犯人役も良かったかな。
ほとんど声しか出演せず、最後に一瞬だけ顔が映るのだけど、「彼だっか」とちょっと驚いた。 これから観る方は「犯人役は誰?」の推測も楽しんでみては?

結末部分で折本が“TV視聴者”とスタッフに投げかける言葉は、賛否ありそう。
作者はこの作品でそれも言いたいことだったのかも知れないが、俺は「このセリフ必要だったかな?」と思った。少し後味を悪くしただけだった。

それはともかく、“生放送”の緊迫感が本作の肝。

泣き虫オヤジ