「良くも悪くも、これがメディア」ショウタイムセブン ジュン一さんの映画レビュー(感想・評価)
良くも悪くも、これがメディア
生中継のテレビショーで
番組がジャックされる。
人質を取った犯人は
相手を名指しし謝罪要求をする。
しかし犯行の本当の目的は
最初に突きつけられたものとは別のところにある。
プロットは同じ年に公開された
〔グッドモーニングショー(2016年)〕
〔マネーモンスター(2016年)〕
を想起させる。
が、本作の元になった韓国映画は
〔テロ、ライブ(2013年)〕で
更に三年も前の作品。
先の二作は十分に影響を受けていると感じる。
本作では、テレビ局で、いや、コンテンツ制作に携わる人間の業の深さを幾つも見る。
数字のため、或いは自分がトップに立つためなら、
多少の非道には目を瞑るし自ら手を染める。
大所高所に立った物言いは、
本心とはかけ離れていても、
大衆の支持を得られれば良い。
悲劇が起きたとしても、
それは(古い言い方だが・・・・)ブラウン管の外なので、
自分たちに直接害が及ぶことは無い。
逆に自分たちに累が及んだ時こそ真骨頂。
どう活かして数字や話題に繋げるか。
〔悪魔と夜ふかし(2023年)〕でも描かれた如く、
頭をフル回転させ、
災いを福へ転じようとするのだ。
人気番組「ショウタイム7」のメインキャスターだった
『折本眞之輔(阿部寛)』だが、突然の降板劇により、
今では系列のラジオ局でDJを担う。
その本番中に入って来た「火力発電所を爆破する」との犯行予告の電話。
当初は真に受けなかったものの、
直後の実際に起きた爆発に驚愕する『折本』だが、
この機を利用し、再び返り咲くことを目論む。
同時刻に生放送されていた「ショウタイム7」のスタジオに乗り込み、
犯人との交渉を続けるものの、
要求は次第に変わり、異なる様相を見せ始める。
あまつさえ、スタジオ内にも爆弾が仕掛けられている可能性が示され、
場のスタッフは窮地に追いやられる。
その中でも持ち前の胆力を見せ、番組を続ける『折本』。
しかし、犯人の矛先は何故か彼に向かって行く。
百分尺の比較的短い時間に纏められた物語りは、
最初緩やかなテンポで始まるものの、
変調するように急を告げ、以降は怒涛のスピーディな展開。
息つく間も無く、次々と意外な事実は提示され、
その度に新たな局面を見せ、
二転三転した末に、秘められた過去の暴露がある。
団円に向かっているハズなのに、
更に一山ありそうな予感を孕んだ終盤まで手に汗握らせる。
練り上げられた脚本に魂を抜かれたようになる。
とは言え、コトの発端があくまでも私怨かつ、
相当に捻じれたカタチの動機なのが
竜頭蛇尾に感じさせる一要素。
常により大きなセンセーションを求める大衆の心情や、
自身に関係が無ければ、
どんな大きな事件も他人事。
不幸を消費しながら日常を続けて行く世間の有りようなど、
多くのエッセンスを、それも最後に盛り込んだため、
{サスペンス}の面白味が削がれてしまった恨みはある。
事件の発端の一要素として取り入れられた、
メディアと権力の癒着だが、
一概にそうとは割り切れぬのがこの国の実態。
許認可権をチラつかせ、
時の政権に迎合しない報道を抑制しようとする
首脳や大臣が居るのだからな。
飴だけでなく、そうした鞭の部分も含め描けなかったのは、
制作主幹事に「テレ東」が入っているから?(笑)。