「ネット全盛のご時世に、TV局を題材とすることに「古臭さ」を感じてしまう」ショウタイムセブン tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
ネット全盛のご時世に、TV局を題材とすることに「古臭さ」を感じてしまう
あまり滑舌の良くない印象のあった阿部寛だが、ニュースキャスターの役でも、あまり違和感を覚えさせないのは流石だし、むしろ、野心家で圧の強いキャラクターがビタリとはまっていたように思う。
事件を生放送することによって、視聴率を稼ごうとするTV局という「よくある話」ではあるのだが、リアルタイムで進行していくキャスターと犯人とのやり取りには引き込まれる。
謝罪を要求された電力会社の社長や総理大臣の様子は一切描かず、放送関係者の対応だけを描くという演出も、臨場感と緊迫感を盛り上げている。
ただ、主人公が看板番組を降板させられた理由をなかなか明らかにせず、それが、犯人の目的に関係しているに違いないと思わせる「引っ掛け」は、何だか肩透かしで、あまり楽しめなかった。
それどころか、犯人が、早い段階で、発電所の工事現場での事故のことを暴露しているのに、主人公が、その時点で、犯人の目的に思い至らないということにも大きな疑問が残る。自分が出世するきっかけとなった事故なのだから、犯人の標的が自分であるということに、真っ先に気付くのが普通だろう。
たった一つの放送局を丸め込んだだけで、死傷事故や薬害事件の真実が隠蔽できてしまうという、「陰謀」のお粗末さにも呆れてしまう。マスコミには、放送局だけでなく、新聞や雑誌もあるし、今の時代には、ネットや配信という強力なメディアも存在しているのである。
そもそも、このご時世に、TV局や視聴率を題材としている時点で、何だか「古臭さ」を感じてしまったのは、私だけだろうか?
同じ理由で、ラストの、主人公による、TV報道を礼賛する演説にもシラケてしまったし、主人公の生死を問う世論調査も、まったく必要なかったと思えてならない。