「前半の緊張感に対して、後半の失速が残念」ショウタイムセブン おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
前半の緊張感に対して、後半の失速が残念
阿部寛さん主演のリアルタイムサスペンスということで期待して、公開初日に鑑賞してきました。同様のファンが多かったとみえ、客入りは悪くなかったです。
ストーリーは、有名な報道番組「ショウタイム7」の元キャスターで、現在は左遷されてラジオ局勤務となった折本眞之輔がパーソナリティを務める番組の最中、リスナーからかかってきた不審な電話の直後に発電所で爆破事件が起き、電話の主と爆破事件の関連に特大スクープの臭いを嗅ぎつけた折本は、これを「ショウタイム7」復帰のチャンスと考え、テレビ局の上層部を説き伏せ、自ら番組スタジオに乗り込み、全国生中継が続く中、犯人との直接交渉に挑む姿を描くというもの。
冒頭から、あっという間に爆破事件へと繋いでいき、その中で現在の折本の置かれている状況を理解させ、折本自身の性格も感じとらせる、テンポのいい立ち上がりです。そして、爆破事件はさらに続くことが予想され、犯人と折本とのリアルタイムのやり取りが緊張感を高めます。
爆弾犯が何かしらの暴露を求め、隠された罪を暴きたいのだろうとうすうす予想はするものの、その意図はわかるようでわかりません。そんな中、事件を利用しようと私利私欲に走る折本の姿が印象的です。前半は、折本の強かさと刻一刻と変化する状況が相まって引き込まれるとともに、少しずつ明らかになっていく犯人の狙いと真相が興味をそそります。
ただ、後半はやや失速気味です。ほぼワンシチュエーションで進む会話劇の様相なので、当然のことながら映像的なおもしろみは薄いです。スタジオ内での爆発はあるものの、極めて小さな警告程度のもので、大した驚きはありません。また、最終的に明らかになる真相も、正直インパクトに欠けます。そもそも爆弾を仕掛けるまでの準備にも無理があります。テレビ局内においては、清掃員という立場を利用したっぽいことがうかがえますが、それでも数や場所を自由に設置できると思えません。ましてや発電所のような重要施設にどうやって仕掛けることができたのか疑問です。
まあ、そのあたりは映画だからと流すこともできますが、ラストはもう少しカタルシスが欲しかったです。せめて、権力の座にあぐらをかく大物どもをすべて吊し上げてスカッとさせてくれるとよかったです。
主演は阿部寛さんで、ほぼ出ずっぱりの独壇場です。まさに阿部さんの「ショウタイム」といった印象です。脇を固めるのは、竜星涼さん、生見愛瑠さん、井川遥さん、吉田鋼太郎さん、前原瑞樹さん、安藤玉恵さん、平田満さん、錦戸亮さんら。