「日本的なテイストではない」ショウタイムセブン アラ古希さんの映画レビュー(感想・評価)
日本的なテイストではない
ラジオ番組に左遷されている元ニュースキャスターに、番組のリスナー参加企画のコーナーで電話をかけて来た人物が、突然電力会社と政府の不正を告発して爆弾テロを起こすという衝撃的な始まり方をするテレビ業界を舞台にした映画である。主人公の元キャスターは、この電話をスクープとしてキャスターに復帰しようという野心的な人物で、犯人の凶暴さや思慮の浅さなど、日本的でないものを感じていたら、韓国映画の焼き直しらしい。勿論、韓国版は見ていない。
徐々に明かされる犯人の境遇や犯行の意図には、いささか同情できる点もあるが、やっていることは自分と同じ被害者を増やすだけのことであり、身勝手極まるブチ切れ方は、日本のものとは全く異なる精神性を示し、一切同情の余地はない。このあたりに非常に違和感を感じた。
爆発が起きているのは火力発電所の他はテレビ局であり、ウェアラブルマイクなどが爆発しているのであるから、少なくとも犯人の一人はテレビ局の内部にいることになるが、火力発電所のセキュリティの厳しさはテレビ局とは比較にならず、プラントを破壊するほどの爆発物を気付かれずに持ち込むことなどまず不可能である。
テレビニュースを舞台にした道具立ては興味深かったが、犯人の知り合いだという自己申告だけで見知らぬ人物を内部に入れたり、いくらでも偽造が可能なメールの文面を証拠だと言ってみたりと、かなり雑なものを感じた。電力会社の社長や総理大臣を 10 分程度で連れて来いというのも無理難題である。
やがて主人公の元キャスターのかつての不正に焦点が当てられるように話が展開して行き、犯人の本当の意図が判明するのだが、火力発電所の爆破とはスケール感が違い過ぎる話である。何もかも同列という括り方もかなり雑である。結末は韓国版と違うらしいが、あの終わり方は卑怯だと思う。
ウジテレビのスキャンダルが話題のこの時期での公開になったというのは本当に偶然なのだろうが、テレビ局の存続が不可能になる話には非常に胸のすく思いがした。根っこが腐り切ったオールドメディアは、自ら不正を告発して消え失せてほしいと思わずにはいられない。
個人的に、阿部寛は VIVANT の野崎のような役が相応しいと思っているので、この折本のような役には向いていない気がする。奇しくも VIVANT で共演していた竜星涼も、「光る君へ」の藤原隆家のようなもっとクールな役どころの方が相応しいと思う。perfume も出演者としてクレジットされていたが、あれで共演と言えるのか非常に疑問だった。
(映像5+脚本3+役者4+音楽2+演出4)×4= 72 点。