劇場公開日 2025年1月31日

「犯人当てをするのがかなり難しい…。2月1週の荒れ枠か…。」遺書、公開。 yukispicaさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0犯人当てをするのがかなり難しい…。2月1週の荒れ枠か…。

2025年2月1日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

今年40本目(合計1,582本目/今月(2025年2月度)3本目)。

 本映画は、ジャンルが何なのか…といったところからはじまるんですよね…。
タイトル通り、いわゆる自死をとげた女の子の遺書を次々読み上げる「だけ」の展開が延々続くのですが、この「読み上げ」という点が特徴的で、文章自体は一切示されないので(一部除く)、読み上げ者の意図的な判断で一部をカットしたり、句読点の位置を変えたりといったトリックが成立し(これらは例示。実際に出るか出ないかはあえて伏せています)、この意味で人狼ゲームやマーダーミステリーのような様相が存在する映画です。

 ただ、そのような観点でみようとしても、1クラスの生徒40人くらいだったかの、20~25人くらいの遺書が読み上げられる生徒(逆に言えば、全く出てこないモブの人も数人はいたような)と登場人物が極端に広いので、誰が誰かもうわからなくなり(この点後述)、この理解、つまり、マーダーミステリーないし人狼ゲームのような観点でみようとしても、「登場人物多すぎで頭の中が整理しきれない」状態も起きます。

 また、そもそも論でいえば、遺書を全部集めてコピーして配りなおせばこのトリックはそもそも成立しないし、それとて(縮小コピーをかけて、数枚に分けるとしても)人数分で考えても1600円ちょっと(10円コピー×4枚×40人で換算)の話だし、高校生であれば「コピー機にかけて全部コピーして配りなおす」ことくらい思いつくであろう点は指摘できるものの、それをどうこうするとトリックうんぬんが全部成立しなくなり映画が破綻してしまうので、映画のような展開にならざるを得ずそうなるのですが、今度はそうすると犯人当てが極端な難易度になり(登場人物多すぎ。一応、ヒント描写はあるのだが、そこに気が付ける方少ないのでは…)、趣旨が不明なのですよね…。

 採点に関しては以下まで考慮しています。

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 (減点0.2/遺書開封罪について)

 この点は実は民法に規定があります(刑法ではない)。民法のそれは広く「遺書」を家裁の検認を経ず公開すること自体を禁止しており、外見からして明らかに遺書であるとわかるものは全てこの適用を受けます(判例、通説)。これは、家裁の検認を経て開封したら「散骨は海にしてほしい」等の財産権と関係のない個人の遺志であったとしても、そうであればそうすればよい(そうしなくてもよいが)というだけにすぎず、むしろ「遺書の財産権的な内容の勝手な改ざん」を禁止する意味において強行規定です(民法内に処罰規定が書かれるのはレアな条文なのだが、実は存在する)。

 ただ、じゃ「家裁で開けましょう」にすると映画は3分で終わるので(ほぼ3分くらいでこの話は出てくるため)それでは映画にならず、まぁそこは仕方なしなのかなとは思います。

 (減点0.2/心裡留保・通謀虚偽表示の第三者対抗要件)

 これらは善意の第三者に対抗できません(93条、94条)。また、判例は94条につき、絶対的構成説を取るため、解釈が変な部分があります。

 (減点0.2/登場人物の名前を覚えるのが(人数が多すぎて)困難で理解に支障をきたす)

 とにかく登場人物の多い映画です。一方で、映画内でどこが舞台かは明らかにされていませんが、「都周線」というような、大阪でいえば大阪環状線にあたるような路線が描かれるシーンがいくつかあり(おそらく、東京を想定しているものと思います)、架空の登場人物だとしてもあまりにも登場人物が多いのであれば、それらの駅名(もちろん、そこは架空なのでしょうが、東京や大阪の環状線を想定して)から名前を取るなど、何らかの工夫が欲しかったです(なお、いわゆる俗にいう「キラキラネーム」は登場しませんが、中には「そう読むのね」と言われないとわからないような登場人物も出てくるので、そこも厳しい)。

yukispica