「やるせない想いが残る司法と冤罪」いもうとの時間 いも煮さんの映画レビュー(感想・評価)
やるせない想いが残る司法と冤罪
時代を感じさせる昭和っぽいBGMとともにサスペンス要素を煽って、これまでの事件経緯を説明する。
ナレーションは同事件のドラマ化で同死刑囚を演じたこともある仲代達矢。
1961年、その事件は奈良県と三重県にまたがる集落で起きた。
村人の集会で振るまわれたぶどう酒に毒物が混入し、それを飲んだ女性5人が死亡した。
世に言う「名張毒ぶどう酒事件」である。
公民館にぶどう酒を運んだ奥西勝が犯人とされる。
彼は取り調べで自白を強要され、
「妻と愛人との関係を清算するためやりました」と自供させられる。
果たして真実は、、。
今作では真実を追求するというよりすでに2015年に獄中で死刑囚のまま亡くなった奥西勝の妹に焦点を当てている。
なぜなら判決を覆す再審のために訴えを起こせるのはもう残された妹しかいないのだから。
妹や奥西の姪は、もちろん彼の無罪を信じている。
あの日、世話好きの性格が顔を出してわざわざぶどう酒を運んでやらなければ、、、。
おじちゃんは村人にハメられたんだ!
と悔しがる。
繰り返す再審請求は新たな証拠らしいものが見つかっても通らない。
観客はそこに司法の黒い闇を見る。
何を隠しているのか、何を開示できないのか。
正義が通らない世の中であることは前の「正義の行方」や「マミー」「拳と祈り」などを観ていれば明らかだ。
では、どうすれば良いのか?
残されたたった1人のいもうとは今日も神に祈る?
「南無妙法蓮華経、助けてください」と。
やるせない想いが募る。
いもうと94歳。彼女の残された時間。
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