蜘蛛巣城のレビュー・感想・評価
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蜘蛛の巣城
能の舞台を参考にしたような緊迫感のあるセリフの調子。森で遭遇する浪花千栄子の妖怪の気味悪さ。黒沢監督がこの時代の話がとても好きだということががはっきりと伝わってくる。 「戦国時代にタイムスリップしてみたい…」と思っていたに違いない。でなければこんな演出の映画は作れない。世界に誇れる素晴らしい映画だけど 最後があっけなくて物足りない…(;_;。もっとじわじわと鷲津(三船)が他の家臣に疑われ 追い込まれていくような場面を長く作っていたら もっと素晴らしい映画になっていたと思う。
1957年のクロサワがいる
50年以上前の映画。 とくに引き気味で能舞台のような映像の美しさと、その中の三船と山田五十鈴が迫真の存在のすばらしさ。 富士山のふもとにこの巨大建物をたて、霧ただよわせと雨を降らせる。構想力が圧倒的だ。こんな監督を彼以外知らない。彼は俳優に演技させない。俳優が役柄とおなじになるまでとことん追い詰める。演技など求めていない。その方法論が映画を唯一にしている。 彼の日本映画だから2020年でも生きている。
白黒映像をこれほど美しいと思うのは黒澤映画ならではだろう。幻想的で...
白黒映像をこれほど美しいと思うのは黒澤映画ならではだろう。幻想的でもあり、生臭くもあり色々な要素が見事に詰まっている。ラストシーンの迫力は圧巻。
幻想と狂気
何度か観ているが、森で迷う三船と千秋実、馬に乗って駆けるシーンは秀逸。
三船の顔つきや眼差しが、精悍さや若さが失われ狂気に変わって過程がすごい。一番の狂気は、奥方の山田五十鈴か。
ラストは、監督が狂気か。ヒチコック的に、明かさず真の表情を引き出したが、絶対の自信があったにせよ一歩間違えば。吹き替えなし、合成なしの時代だから、これはかなりきわどい演出だ。
そして森はいつも幻想的。
この時代の映画、画像はだいぶ修復されているが、音声が聞き取りやすい加工してほしい、といつも感じる。
いや〜面白い。さすがは世界の黒澤。 物の怪老婆の予言が如何に実現し...
いや〜面白い。さすがは世界の黒澤。 物の怪老婆の予言が如何に実現していくかの話。そこに見え隠れする人間の性。 山田五十鈴の怪演がお見事。三船が「俺を殺す気か」と激怒したラストシーンも迫力満点。 もう何作見たかな。黒澤明のすごさを痛感します。
白黒かつ膨大な予算を動かせるであろう黒澤組ですら、この蜘蛛巣城で理...
白黒かつ膨大な予算を動かせるであろう黒澤組ですら、この蜘蛛巣城で理想のカットを撮れたかというと、違うだろう。合戦はおとなしく、森は小ぢんまりと迫る。黒澤明は予算も時間も超過すると言われるが、正論はどちらか明白だろう。
望遠レンズを使って矢を受けるシーンを撮ったという裏話が記憶に残る
シェイクスピアの『マクベス』を基に戦国武将の物語にした作品。この頃、“能”を中心とした日本の美にこだわりを持つようになった黒澤。城内でも能が演じられているし、予言をする物の怪の雰囲気は違った意味での美が感じられる。 鷲津にしか見えない幽霊のような描き方はどことなく溝口作品をも感じてしまう。それにしても圧巻のクライマックス。次々と放たれた矢が三船敏郎を襲う。彼が「死ぬかと思った」と回顧するほど無茶苦茶なことをやっていたようだ。まぁ、このシーンがこの映画の目玉であるわけだが・・・
完璧では無い脚本が完璧な映画を作る。
もちろんシェイクスピアのマクベスという素晴らしい原作があるのだが映画脚本としては決して優れているとは言えない。むしろ優れた脚本を書こうとはしていないようだ。原作が舞台であることから舞台を意識した脚本になっている。だから映画としては地味すぎ、説明的すぎる部分もかなり目立つ。例えば、危機を逃れたの若者が、その後どのように怒っているかというところは普通は脚本に描かれる。あえて城と森からカメラを出さないことによってまるで我々が舞台という限られた一面しか見ていないかのような錯覚を与えているのである。そのような制約を設けた脚本から黒澤明はこのような素晴らしい映画を作った。この映画の素晴らしさはそのスローペースにあるのだろうと私は思う。話の展開そのものはスピーディーに進むのであるが、ひとつひとつのシーンが極めてスローに進む。その絶妙な演出が素晴らしい。またカメラは基本的には静止しているのだが時折まるで生き物のように動く。静と動のバランスが素晴らしい。または三船敏郎の甲冑姿がすばらしく良く撮れている。前半はストーリーの退屈さをカバーするために甲冑姿をアップで美しい角度からたくさん撮ってている。クライマックスあたりになるとわざとそれを抑え極端な煽りとかを使って真正面から撮らないようにしている。そして最後の最後に真正面から美しく…私はあのシーンを敢えて美しいと表現するが…捉えているものにカタルシスを与えているのである。また城の造形とその造形を美しく見せるカメラワーク、軍兵、馬、軍兵の持つ旗などが動く動きの美しさ、面白さと言ったら極めつけである。 もっとも素晴らしい映画とは新しいイマジネーションを生み出している映画だと私は評価する。これは1つの最も素晴らしい映画であり黒澤明の代表的な傑作の一つである。
もしかしたら本作は黒澤監督による、溝口監督への追悼作品であったのかもしれません
マクベスの翻案であるというのは有名なので、筋書きは最初から決着まで誰もがどうなるのかどう展開するのかを見通して本作を観ているはずです それでも面白いのです いや、分かっているからこそ一層面白いのです なるほどこう移植されるのかと納得して、整理されている脚本にまず感心するのです そうして能の要素を駆使していることによって、日本の美意識、諸行無常の死生観をこの西洋の物語に注入することによって、完全に日本の物語にして映画として観せていることに驚嘆するのです その映像世界は溝口健二監督の作品世界を思わせます 特に山田五十鈴が演じる奥方の主人公への献策シーン、中でも大殿の殺害を教唆するシーンや懐妊告白のシーンは、雨月物語での彼女の出演シーンを彷彿とさせるものです そのシーンを含め正にカメラもワンシーン・ワンカットの長回しで異常な緊張感をもたらす溝口監督の作風が本歌取の如く多用されているのです 溝口監督は本作公開のわずか4ヶ月前に白血病で急死されています もしかしたら本作は黒澤監督による、溝口監督への追悼作品であったのかもしれません それでいて第一級の娯楽作品なのです クライマックスの雨あられと飛来する矢射けのシーンはありとあらゆる弓矢の戦闘シーン、銃撃戦を含めても古今東西の映画に勝る迫力です CGを駆使できる現代であっても、いやだからこそこの迫力はだせないのです 三船敏郎の恐怖に歪む顔は嘘偽りのない本物の恐怖です こんな演技はできるものではありません 本物だからこその迫力があるのです 蜘蛛巣城の巨大セットもまた画面のスケールと物語に於ける強欲の巨大さを見事に表現しています 夜に大量の鳥が場内に飛来するシーン もしかしたらヒッチコックの鳥のインスピレーションの出発点だったのかも知れないと思いました それほどの不気味な迫力のあるシーンでした こんな映像は当時全く誰も観たことのないものだだったはずです 世界最高峰の映画の一つといって間違いないと思います
・こんなに人の言葉に流されやすい侍が強気でいるのがおもしろい ・タ...
・こんなに人の言葉に流されやすい侍が強気でいるのがおもしろい ・タガが外れる女は五十鈴に限るな ・そこまでしてだまくらかすのか!という最後
よっく聞け
黒澤版Macbeth。 魔女は一人だけのようで、Macbeth夫人に当たる浅茅が、邪念に一層取り憑かれているように見えました。 ポジティブに取るも、ネガティブに取るも、 ものは受け取りよう…(^^)。 カメラはそのままで役者が奥に消えまた戻って来たり、ズームインとアウトで姿を現したり消したり、濃霧(に見立てた煙)を上手く使ったり、この頃の斬新な撮影手法でしょうか。枯枝で自然に蜘蛛の巣を表現している所が良かったです。白黒ならではですね。 山田五十鈴の気味悪さは半端ない。 志村喬の知恵者役はぴったり。 三船敏郎の眼力・顔力は衰え知らず。 千秋実の幽霊姿や終盤の矢の多さにちょっと笑ってしまいましたが、主人公の最期は、夢に出て来てうなされそうなくらいの迫力です。 疾走する騎馬武者の勇姿は、黒澤&三船が最強だと勝手に思っておりまして、そこも結構観ることが出来ました。
聞き取れない
古い映画なので仕方がないかもしれませんが、セリフが 聞き取れない事が多く、展開がよく分かりませんでした。 主演の三船さんの演技は迫力ある演技で、馬術も様になって カッコよかったです。 つぎは日本語字幕が付いているものでしっかり見たいです。
ギランギランした眼!
未見だった黒澤の一作をデマンドで。 黒澤娯楽作のファンからするとなんとも重たく感じた一本。マクベス原作ってのは後から知る。映画的ではない能を取り入れたモンタージュは、リズムに合えば楽しめるがそうでなければちょっとキツイ…。 山田五十鈴演じる妻の存在が恐ろしい。(この人が一番悪いんじゃないでしょうか) 静から動のラストは見事!(後で揉める事になるのは先に知ってしまっていたのだが、それも納得のシーン) 黒澤好きならどうぞ、という感じです。
おどろおどろしく、惑う。
DVDで2回目の鑑賞。
疑心暗鬼に追い詰められ、自滅していく武将を演じる三船敏郎が素晴らしい限り。目を剥きながらの迫真の演技が画面から迫って来るようでした。恥も外聞も捨ててる感が秀逸!
妻役の山田五十鈴も、雰囲気・佇まいからして只者じゃないことが感じられて、人物造形がしっかりしているな、と…
想定を上回る恐怖の連続の末に発狂し、「血が落ちぬぅぅぅっ」と繰り返し桶で手を洗う姿がこれまた壮絶でした。
蜘蛛手の森が霧の中で動くシーンは、音も無く静かに忍び寄って来る感じがとてつもなく不気味でした。これを見てしまえば、いくら勇猛果敢な武将でも怖気が走るのは当然のこと。モノクロ画面だからこその怖さだなと思いました。これがカラーだったら全くの興覚めになるのではないかしら?
有名過ぎるクライマックス、本物の矢が三船敏郎目掛けて射られるシーンが大迫力。本当の恐怖がそこにありました。まさに命懸け。三船は後で黒澤監督に大激怒したとか…
合戦シーンなどは大人し目でしたが、本作は人間が内に秘めたる野心や強欲がこれでもかと描かれていて、スペクタクル的な迫力では無く、人間自体の迫力に圧倒されました。
※修正(2023/06/01)
初めて観る風の映画で、現代にはあまり好まれ難い雰囲気もあるけど話が...
初めて観る風の映画で、現代にはあまり好まれ難い雰囲気もあるけど話が進むにつれて面白くなってくる 能が良い感じに奇妙な恐ろしさを出していて、マクベスを上手く日本風にされているなと思った 現代の映画ばかりでなく昔の映画も観るのも面白いと思った
シンプルな話に力のある映像で、目が離せない
久しぶりに黒澤作品を観たが、思った以上に良くて驚いた。 とにかく目が離せない。 シンプルな話なのだけれど、映像に力がある。 馬が良く撮れていて良かったし、三船の顔も良かった。 黒澤作品、未見の作品を残らずチェックしたくなりました。
作品は微妙??
物の怪が最初登場するシーンや手をひたすらに洗うシーンに狂気を感じて二十歳の自分でも怖かった。まぁそれが不気味さを際立たせていて良いんだけどね。でも、子どもの頃観てたらきっとトラウマ。 有名な弓矢のシーンが最高。あれを学生弓道部の部員が実際に三船や三船の周囲めがけて矢を射た(ただし、筒状の矢にワイヤーを通し、着点に誘導したもの。また遠距離からではなく、カメラフレームすぐ横からの射的)って言うんだから凄い。撮影が終了した後、三船が黒澤に「俺を殺す気か!?」と怒鳴るのも分かる。役では実際死んでるけど。(wiki参照)
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