「「武替道」とは?」スタントマン 武替道 おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
「武替道」とは?
■ 作品情報
監督はアルバート・レオンとハーバート・レオンの双子監督。主要キャストは、伝説のアクション監督サム役にトン・ワイ、若手スタントマンのロン役にテレンス・ラウ、人気アクション俳優のワイ役にフィリップ・ン、サムの娘チェリー役にセシリア・チョイ。2024年製作の香港映画。香港アクション映画界の舞台裏を描くヒューマンドラマであり、特に『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』のキャストが多数出演している点も注目される。タイトルの「武替道」は「スタントの道」を意味する。
■ あらすじ
1980年代に名を馳せたアクション監督サムは、過去に危険なアクション撮影でスタントマンを半身不随にしてしまい、映画業界を引退、現在は整骨院を営んでいる。ある日、旧知の老監督から最後の作品となる新作のアクション監督を依頼され、数十年ぶりに現場へ復帰する。彼は偶然出会った情熱的な若手スタントマンのロンを助手に迎え、自身の信念を貫くが、現代の撮影現場ではその古き良き手法は通用せず、制作陣やかつての弟子である主演俳優ワイとの間に軋轢を生む。加えて、娘チェリーとの関係もぎくしゃくし、過去の事故で大けがを負わせた男の家族からの恨みを買うなど、様々な問題がサムを取り巻く。映画製作の困難と、サム自身の頑なな生き様が描かれる。
■ 感想
かつてスクリーンを彩った香港アクション映画を夢中で観ていた頃を思い出し、製作の裏側でいかに命懸けの挑戦が行われていたのか、その苦労と工夫にスポットが当てられることを期待して鑑賞してきました。確かに、香港アクション映画の「陰の立役者」であるスタントマンたちに光を当てた点は、非常に評価できます。その情熱は、スクリーン越しにも確かに感じられます。
しかし、期待していたテイストとは、残念ながらちょっと違ったかなという印象です。古き良き時代の撮影手法に固執し、周囲との摩擦を引き起こす主人公サムの姿は、一貫して、退かぬ!媚びぬ!省みぬ! それが映画づくりにかける情熱ともとれますが、正直なところ、観ていて心地よいものではありません。どんな職場でも起こりうる世代間の軋轢、価値観の相違には共感できる部分もあります。ですが、現代の物語として描くのであれば、そうした自身の常識や価値観とのズレから学び、変化し、アップデートを試みる流れこそが一般的ではないでしょうか。
撮影現場以外でも、娘とのぎこちない関係、過去に大けがをさせてしまった男の家族からの恨み、そして自身の作品に惚れ込んでいたはずのロンとの決裂など、あまりに自己中心的なトラブルメーカーとしてのサムは、もはや「老害」です。それなのに、ラストシーンでは強引な力技でハッピーエンドのような雰囲気にまとめられていて、ちょっとびっくりです。結局、サムに始まりサムに終わる、サムのための作品だったという印象が強いです。
若手スタントマンのロンや、かつての弟子であるワイの視点や主張が、あまりにも的を得ていただけに、よけいに登場人物の中でサムだけが「おかしい」という不思議な感覚に陥る作品でした。香港映画の灯を絶やすまいとするサムの思いは理解できるだけに、こんな描き方しかされないサムが、ちょっと気の毒になってしまいました。
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