「アクションシーンは良いと思うけど、設定が色々と破綻しているのでブラッシュアップが必要」勇敢な市民 Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
アクションシーンは良いと思うけど、設定が色々と破綻しているのでブラッシュアップが必要
2025.1.23 字幕 MOVIX京都
2023年の韓国映画(112分、PG12)
原作はキム・ジョンヒョンのウェブ漫画『용감한 시민』
非正規教師が高校内の悪事と戦う様子を描いたアクション映画
監督はパク・ジンビョ
脚本はヒョン・チョンユル&ヨ・ジナ
原題は『용감한 시민』、英題は『Brave Citizen』で、ともに「勇敢な市民」という意味
物語の舞台は、韓国・釜山にあるムヨン高校
非正規教師として採用されたソ・シミン(シン・ヘソン)は、かつてボクシングの五輪代表寸前まで上り詰めたが、その敗戦を機に足を洗い、新しい生活を始めていた
ムヨン高校は校内暴力がない優秀校と評価されていたが、実際には財閥の息子と言われるスガン(イ・ジュニョン)がやりたい放題を行なっていた
スガンは腕っぷしが強く、取り巻きからも一目置かれていて、慎重にターゲットを選んでは、足がつかないようにイジメを行なっていた
ある日のこと、ターゲットとなっているジニョン(パク・ジョンウ)から相談を受けたシミンは、教育庁にいじめの件を報告してしまう
その行為はスガンの母(キム・へファ)を怒らせ、弁護士を同席させて怒鳴り込んできた
生活部長のジェギョン(チャ・チョンファ)は法的根拠で反論するものの、母の怒りは治らず、やむを得ずにシミンが名乗り出て、土下座をして、場を収めることになったのである
映画は、華奢な教師が実は元ボクサーだったというもので、ロンドン五輪の代表候補に選ばれるほどだったが、相手との裏取引のためにわざと負けていたという設定になっていた
そんな彼女はボクシングからキッパリと足を洗って教職に専念することになったのだが、その赴任先が問題校だったという流れになっている
そこまで特別な話でもなく、見た目ギャップを利用しているのだが、さすがに組み合って相手が男か女かわからないには無理があると思う
華奢であることが売りなので仕方ないが、男女誤認を主とするのならば、配役ミスなのかなとも感じた
とは言え、そこはツッコむところではないのだが、最後の文化祭で「女とわかる」というところを考えると、何かしらのエクスキューズが必要だったのだと思う
物語は、学校のいじめを止めるというありきたりなもので、設定そのものには面白味や奥行きはない
それゆえに主人公の過去話を盛っているのだが、わざと負けたみたいなエピソードは要らないように思う
単に実力不足だったというのでも話は通じるし、それで広がった話が父親との不和ぐらいなもので、それも大した怨恨にもなっていない
もっと父親が鬼のような人物で、弱いから2度とリングを踏ませないという障壁になっている方がわかりやすい
復讐を決めても「弱いからやめとけ」と言われ、秘密の鍛錬によって、心の弱さが払拭された、みたいな話でも良かったと思う
映画で、一番難点に思えるのは「爽快感の無さ」で、それはセミプロが一般の高校生を相手に戦っているからだと思う
スガンが財閥の息子だからひれ伏しているのか、単に学校一で強いからなのかというところが曖昧で、取り巻きは強さを認めているけど、他の生徒は違う理由で反抗しないので、そこがスッキリとまとめられていたら良いのだろう
財閥の出であることで学校との関係性が構築されているとしても、ことフィジカルの部分においては「ボクシング部のエース」とか、「伝説の不良」ぐらいの肩書きがあった方が「爽快感があった」のではないだろうか
いずれにせよ、猫をモチーフにしているので、猫っぽい動きを取り入れているのだが、それだけでは面白味が半減のように思う
メンター的な立場の人間がいて、父親に内緒で彼女を特訓するというエピソードが必要で、適任なのは父親よりも強いボクサーだったチキン屋の店長サンウ(イ・ジュンオク)だろう
彼は最終決戦に向かうシミンを後押しする役割も担っているので、チキン屋でのやり取りを活かすなら、そう言ったシーンがあっても良かったのだろう
また、悪人の割には怪我をした左手を狙わないなどのフェアっぽさというのが邪魔になっているので、最後までヒールを貫くなら、そのようなダークさがあっても良いのかな、と感じた